2013 Fiscal Year Annual Research Report
含金属被覆型分子ワイヤの合成と分子エレクトロニクス素子への応用
Project/Area Number |
13J01889
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正井 宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子ワイヤ / ロタキサン / 固体燐光発光 / 電荷移動度 |
Research Abstract |
本研究では分子主鎖に白金アセチリド錯体を導入した被覆型分子ワイヤを合成し、その固体燐光発光特性を明らかとした。各種物性測定の結果、分子ワイヤは環状分子の3次元的な被覆によって、分子間相互作用を高度に抑制しており、固体中における量子収率・発光波長は希薄溶液中の値と同程度となった。すなわち、被覆型分子ワイヤはその完全な被覆によって、固体状態であっても独立した単分子として、希薄溶液中のように燐光発光したことを示している。さらに、被覆の効果を明らかとするため、被覆個所や被覆の割合が異なる様々な被覆型分子ワイヤを系統的に合成し、固体燐光発光特性を探索した結果、固体燐光発光を可能にするのは、金属近傍だけではなく、共役鎖全体を高い割合で被覆したことが重要であることを見出した。 また、両端に配位結合部位を導入した被覆モノマーを用いて、ルテニウム・ピリジル型の分子ワイヤを合成し、その固体物性を明らかとした。分子ワイヤの伝導度の時間減衰から、キャリアであるカチオンラジカルは1ミリ秒にも及ぶ長い寿命を有することが分かった。これは金属錯体特有の性質として、三重項の関与が示唆される。光照射によって生成するカチオンラジカルに加え、ルテニウムポルフィリンによって生成した非発光性の安定な三重項から、三重項・三重項消滅過程を経て熱的にカチオンラジカルが供給され続けたためと考えている。この長寿命化には被覆構造も必須であり、対応する非包接型の分子ワイヤでは寿命が大きく低下し、マイクロ秒オーダーの寿命を示した。これは分子間相互作用による三重項の失活が生じたためであり、重元素と被覆構造の協同効果によって、長いキャリア寿命が達成されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2つの分子ワイヤにおける物性測定の結果から、金属錯体の有用な性質として知られる三重項励起状態は被覆構造によって高度に保護されることで、三重項に由来する特異な物性が分子間相互作用を強く受ける固体状態であっても単一分子として発現することが明らかとなった。これは金属錯体を介した分子ワイヤが、機能性デバイス材料としての有用性を示すと同時に、これまで溶液中でのみ発現していた金属錯体の機能を、被覆によって固体材料へ応用する可能性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた系統的な知見に基づき、分子内電荷移動度・機能性・安定性の観点から配線材料として最適な含金属被覆型分子ワイヤを選択し、ナノ電極間における分子配線を試みる。金属錯体との錯化重合を実現する他、自己組織化による配線効率への影響を評価し、その優位性を明らかにする。さらに、配線したナノデバイスに対し外部刺激を作用させることで、酸化還元に対するスイッチング挙動、発光における物性評価を行う。これによって含金属被覆型分子ワイヤを用いた、有用な分子エレクトロニクス材料への設計指針を提案する。
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Research Products
(7 results)