2013 Fiscal Year Annual Research Report
内生的な二値変数を伴う非加法的モデルにおける推定手法の開発
Project/Area Number |
13J02035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳 貴英 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ノンパラメトリック推定 / 非加法的モデル / 内生性 / 同時方程式モデル |
Research Abstract |
本年度は、内生的な二値変数を伴う弱分離的モデルにおける構造関数のノンパラメトリック識別・推定手法の開発に取り組んだ。内生的な二値説明変数をもつ弱分離的モデルの識別・推定手法は計量経済学分野の未解決問題である。内生的な二値変数をもつ経済学の実証分析例は数多く存在するため、本研究は計量経済学分野において重要な意義をもつと考える。 本年度に得られた研究成果の1つは、構造関数の識別手法の開発である。識別手法を開発する際に問題となるのは、相殺条件と呼ばれる条件を満たす説明変数の値を説明変数のサポートから見つけだすことであった。本研究では既存研究の結果を修正・応用することにより、この相殺条件を満たす説明変数の値をサポートから探す方法を考案した。その結果、いくつかの正則条件のもとで弱分離的モデルの構造関数をノンパラメトリックに識別できることを示すことに成功した。具体的には、内生的な二値変数と操作変数を条件づけたときの被説明変数の条件付き分位点関数により構造関数を区間識別できることを示した。 識別結果を開発することに成功した後には、識別結果に基づいた推定量を構築することに取り組んだ。本研究の識別結果に基づく推定量は2段階のものである。1段階目の推定は相殺条件を満たす説明変数を見つけるためのものであり、局所多項回帰推定を行うことを考える。2段階目の推定は被説明変数の分位点関数を推定するためのノンパラメトリック分位点回帰である。この2段階推定量を構築した後に、構築した推定量の漸近的性質を導出することに尽力した。具体的には、構築した推定量の一致性および漸近分布を導出することに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
識別手法の確立および推定量の構築には成功したが、本年度中に導出する計画であった、構築した推定量の漸近的性質の導出を完了できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度に引き続き、構築した推定量の漸近的性質を導出することに尽力する。これに成功した後には、推定量の小標本性質を調べるためにモンテカルロシミュレーションを行う。そして、本研究で得られた成果を論文にまとめる。論文の初稿を完成させた後には、本研究を国内外の研究集会で積極的に発表し、得られたコメントを参考にして改訂作業を行う。最終的には、本研究論文を国際学術雑誌に投稿する。
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