2013 Fiscal Year Annual Research Report
過去の経験がオスの自己及び他者に対する評価に与える影響
Project/Area Number |
13J02149
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安田 千晶 北海道大学, 大学院水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オス間闘争 / 評価戦略 / 意思決定 / 過去の経験 / ヤドカリ |
Research Abstract |
本研究の目的は、闘争前の様々な経験が、オス間闘争における、オスの自己及び他者に対する評価方法や基準に与える影響の解明である。本年度は、テナガホンヤドカリ(テナガ)、ヨモギホンヤドカリ(ヨモギ)、ホンヤドカリ(ホンヤド)の3種全てを用いて実験した。ただし、研究の進捗状況や各々の種の繁殖期との兼ね合い等により、各実験内容と対象種の組み合わせは計画と異なるものになった。 今年度は(1)テナガにおける直近の勝敗の影響(当初の課題①に相当)を詳細に解析した結果、オス間闘争に敗北した経験をもつオスは、単純な敗者効果ではなく、過去の闘争と同じ相手と再遭遇した場合にのみ自己評価を下げることが示された。また、同じ相手との遭遇では相互評価を用いて意思決定する、という当初の予想以上の成果を得た。研究員は本成果について精力的な学会発表をおこない、2つの発表賞を受賞した(2013年日本ベントス学会学生発表優秀賞、English Presentation Award Best Award)。さらに、本成果をまとめた原著論文を国際誌に投稿中である。また、(2)ホンヤドにおける直近のガード経験(当初は予定されていなかったが、共同研究として実施)、(3)ヨモギにおける直近の交尾経験(課題③相当)、(4)テナガにおけるひと月前の自切経験(課題②相当)が、オスの評価戦術に及ぼす影響を実証するための実験をおこない、各実験条件を解析するための動画データを得た。(2)については、本種のオスがガード経験によりオス間闘争へ高い意欲をもつことが示され、現在、国際誌に投稿すべく論文を執筆中である。一方、(3)、(4)は現在も動画データを解析中であるが、2種のオスの自己評価が、交尾経験によって上昇する、あるいは自切経験によって低下する傾向が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定とは異なる組み合わせだが、本研究の対象種である3種全てを用いて複数の課題に着手した。また、課題①に相当する「テナガにおける直近の勝敗の影響」研究では、上記の通り予想以上の成果が得られただけでなく、学会発表や原著論文を投稿するに至った。一方、他の課題については現在継続中であり、成果の提示は難しい。しかし、各課題共に一定の方向性を得ることはできた、ということで区分を②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に、上記の(2)直近のガード経験、(3)直近の交尾経験、(4)ひと月前の自切経験の影響、について、得られたデータのより詳細な解析に努め、成果を学会で発表して論文を執筆する。 また本年度に、勝者/敗者効果による評価戦術の変化について予想以上の成果が得られたことを受け、これらの経験が配偶者選択に及ぼす影響について、ヨモギとテナガを対象種とした実験を実施する。ただしヨモギの実験については、共同研究とする。
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Research Products
(9 results)