2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J02206
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
濱口 弘太郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 損害賠償法 / 損益相殺 |
Research Abstract |
1 具体的内容 損益相殺は、普通法下のドイツにおいて成立した概念であるが、当時通説化した(そして現在も通説である)差額説より導かれた概念である。差額説は、加害事象によって生じた(即ち因果関係のある)全財産の変動、即ち、すべての損害及び利益の考慮を指示するが、現実にそのような考慮が行われたことはなく、また、ほとんどの場合不可能である。しかしながら、差額説においては損害も利益も等しく考慮することが命じられる結果、損害に妥当する原則は、ちょうどそれを鏡に映したように利益にも妥当するとの考え方が存在する(Thüsingのいう鏡像思想)。この考え方は、ライヒ裁判所の判例など、戦前のドイツ法に見られる他、ドイツ法の影響を受けた我が国の学説においても見られる。しかし、現在においては、ドイツ法においても日本法においてもほとんどこの考え方は採用されていない。それゆえ、新しい損益相殺についての根拠を考える必要がある。 2 意義及び重要性 損益相殺は、賠償されるべき損害の範囲を確定するための概念であり、それゆえ、損害論の一部をなすものである。鏡像思想は、いわば損益相殺について、一般的な損害と異なる地位を認めない考え方であるということができる。日本法において、このような考え方を採るのは平井博士である。平井博士は損害の評価を裁判官に委ねることによって、いわば、損害についての一般的な基準を確立しないことによってこのような考え方を採るに至ったのであり、鏡像思想は、このような見地においては支持しうるかもしれないが、それ以外においてはおおよそ採用する余地がないように思われる。 このように鏡像思想という観点から検討することによって、利益と損害との異質性が明確になり、単なる差額説では解決することができない損益相殺の問題性が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の「研究の目的」第2文記載の調査を概ね終えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、残りの交付申請書の「研究の目的」記載の研究を行う。
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Research Products
(1 results)