2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代分子変換を指向した「遷移金属錯体/有機分子」リレー型触媒系の創生
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13J02264
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿又 喬平 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | キラルリン酸触媒 / Petasis-Ferrier転位 / C-H…O水素結合 / DFT計算 / π-スタッキング / 不斉触媒 / 有機分子触媒 / ブレンステッド酸 |
Research Abstract |
当初計画していた遷移金属錯体と有機分子触媒を組み合わせた新規リレー型反応を探求する過程でキラルリン酸触媒を用いたPetasis-Ferrier型転位反応を検討していたところ、反応の立体選択性についてたいへん興味深い現象を見出した。本反応の立体制御機構について詳細に解析することは、有機分子触媒として現在高い注目を集めているキラルリン酸触媒の立体制御機構についてきわめて重要な知見を提供するものと考えられたため、詳細な解析を行った。 キラルリン酸触媒による7員環ビニルアセタールのPetasis-Ferrier型転位反応について反応条件の検討を行ったところ、R体の基質に対し触媒として3および3'位にトリフェニルシリル基が置換したキラルリン酸触媒を作用させるとアンチ選択的に反応が進行した。一方でS体の基質に対し触媒として3および3'位に9-アンスリル基が置換したキラルリン酸触媒を作用させるとシン選択的に反応が進行した。 続いて立体制御機構を解明するため量子化学計算による遷移状態の解析を行った。その結果、触媒に対する反応基質の配向がC-H…O水素結合によって制御されていることが示された。このことは、ヘテロ原子間で形成される通常の水素結合に代わり、C-H…O水素結合が重要な立体制御因子として機能し得ることを示唆するものである。また触媒上の置換基が9-アンスリル基の場合には、π-スタッキングによる遷移状態の安定化が、反応の立体選択性を決める鍵になり得ることが示された。触媒上の置換基による安定化効果はこれまでキラルリン酸触媒の反応でよく理解されてきた立体障害による選択性の制御と対照的であり、今後の触媒設計にとって有益な示唆を与えるものである。 今回の検討で得られた触媒と基質との相互作用に関する新たな知見は、今後の反応開発、触媒設計にとってきわめて重要な指針になるものと確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験研究から理論研究までを合わせて包括的に研究対象に取り組み、反応の立体制御機構について多くの知見を得ることができた。この結果はすでに学会等で発表し、投稿した論文は審査段階に入っている。さらに今後計画している新たな反応開発と理論研究についても、すでに予備的な研究を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたC-H…O水素結合やπ-スタッキングによる立体制御機構に関する知見をもとに、キラルリン酸触媒による新たな反応系を設計して検討を進める。具体的にはこれまでほとんど利用されてこなかった、水素結合のアクセプターサイトを持たない基質に焦点を当て、不斉反応の開発を進める。 またすでに実験条件を確立し報告済みの反応系についても(M. Terada, K. Kanomata et al, Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 12586-12590.)、本研究で得られた知見をもとに量子化学計算による反応の解析を行い、立体制御機構を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(3 results)