2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体鉱物の形成過程における中間相の構造・安定性について
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13J02283
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉浦 悠紀 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | バイオミネラリゼーション / アモルファス / 相転移 / 結晶成長 / 中間遷移相 / 炭酸カルシウム / リン酸カルシウム |
Research Abstract |
本年度は、全ての生物に共通の体液イオン組成環境下にであるCa-CO_3-PO_4 3成分系において、(1)炭酸カルシウムの一相であるバテライトの成長及び溶解に対するリン酸イオンの効果を検証する研究、(2)コラーゲンなどの表面に存在している不溶性のカルボキシル基が、リン酸カルシウムの相転移ダイナミクスに与える影響についての研究を行った。(1)光学顕微鏡によるバテライト結晶の成長及び溶解過程その場観察、SEM、TEM、EDX等による形成相の評価を通じて、リン酸イオンがバテライトの前駆体であるアモルファス相の構造を変調すること、及びその結果として見かけ上バテライトの表面エネルギーを変化させる現象を初めて見いだした。さらに、リン酸イオン存在下では、より不安定なバテライト構造を持つ結晶相が表面エネルギーの差により出現するということも見出した。この成果は現在2報の論文として投稿中である。 以上の成果に引き続き、上記(2)の研究を行った。メルカプタンの1種であるMUAという有機物を金ナノ粒子上に固定したものを不溶性カルボキシル基として用いた。光散乱法による溶液中での粒子集積過程観察及びTEMによる析出物の同定の結果、MUAを含む系では、初成相であるアモルファスリン酸カルシウム(ACP)から8リン酸カルシウム(OCP)への相転移過程上で、未知相であるリン酸第3カルシウムβ相によく似た中間遷移相(擬似β-TCP)が観察された。MUAを含まない条件では、擬似β-TCP相は出現しない。また、ACPの集積速度及び結晶相への相転移速度にもMUAの含有による違いが観察された。この結果は、適切な添加物により、リン酸カルシウムの形成過程において従来未知の中間遷移相を自由に形成出来る可能性を示し、新たなバイオマテリアル形成への応用が期待できる。本成果は、短報誌として国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、炭酸カルシウム系、リン酸カルシウム系での中間遷移相のダイナミクス及び、構造に関して多くの有用なデータをとることができ、その成果は3本の論文としてまとめることが出来た。以上を鑑みるに、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸カルシウム系で得られた中間遷移相の1種である擬似β-TCPは、その物性から骨再生バイオマテリアルとして有用な物質であるということが期待される。今後は、この擬似β-TCPの物性についてより詳細な測定を行う予定である。具体的には、得られた擬似β-TCPを加熱処理し、結晶構造解析及び、溶解・成長ダイナミクスについて調べていく予定である。
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Research Products
(2 results)