2013 Fiscal Year Annual Research Report
顕微ラマン分光法を用いた地質温度圧力計の開発と応用:残留圧力から読み解く変成履歴
Project/Area Number |
13J02303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
纐纈 佑衣 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ラマン分光法 / 残留圧力 / 地質温度圧力計 / ホスト-包有物 / 炭質物 / 付加体 / 断層 / 石油根源岩 |
Research Abstract |
昨年度は、ザクロ石中に含まれている石英包有物の残留圧力をラマン分光法で見積り、その値から石英が包有された時の温度圧力条件を制約する数値計算モデルを確立させた(Kouketsu et al. 2014, American Mineralogist)。同手法は岩石学の分野で主に用いられている熱力学モデルから独立した新たな地質温度圧力計であり、従来の手法では検出する事が難しかった情報を取り出せる事が期待される。例えば、四国中央部別子地域の変泥質岩について同手法を適用し、熱力学計算では見積もる事が難しかった累進変成作用時の温度-圧力条件を提案した(Kouketsu & Enami 2013, 連合大会招待講演)。また、ザクロ石-石英包有物の組合せだけでなく、他のホスト-包有物の組合せにも適用可能かを検討中である。四国別子地域の石英エクロジャイトについては、ザクロ石中の石英包有物と共にジルコン包有物の残留圧力が見積もられた。この2つのホスト-包有物組合せからなる等残留圧力線を計算し、その交点から温度圧力条件を見積もった結果、先行研究による熱力学計算とほぼ一致し、残留圧力を用いた地質温度圧力計が有用である事が裏づけられた。さらに、分析装置のステージをXYZ方向に制御し、包有鉱物の残留圧力マッピングを行った結果、残留圧力は均質ではなく方向によって異なる事が示された。今後は粒形や異方性を考慮に入れた数値計算を行い、測定結果と比較する予定である。 上記の研究に加えて、300℃以下の低温領域で適用可能な新たな炭質物ラマン温度計を開発・提案した(Kouketsu et al. 2014, Island Arc)。本研究内容は、当初の研究実施計画には組み込まれていなかったが、付加体、断層、石油開発など様々な分野に適用できる可能性があり、いくつかの研究室、企業と共同研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度はホスト-包有物の残留圧力を用いた地質温度圧力計の開発に加えて、低温領域に適用可能な炭質物ラマン温度計の開発・応用にも取り組んでいたため、申請書に記載した通りに進まなかった。また、残留圧力の3次元マッピングを行う予定だったが、装置制御ソフトにいくつかの問題があったため、信頼できるデータが得られなかった。ただし、ソフトについては開発元の企業に問題点を報告し、改善しつつある。また、開発した炭質物ラマン温度計は、様々な研究分野における応用が期待されており、今後も共同研究を遂行していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はやや遅れている残留圧力を用いた地質温度圧力計の開発を中心に進めていく予定である。特に、新しいホスト-包有鉱物で適切な組合せを見出し、鉱物が形成された温度圧力条件の見積り手法を確立させる。また、残留圧力のマッピングを行うとともに、包有物の形やホスト-包有物結晶の異方性を考慮に入れて数値計算を行い、測定結果と数値計算が一致するかを検証する。この成果を基に、より精度の高い地質温度圧力計に改良する。
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