2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者における統語・韻律情報処理メカニズムの統合的解明
Project/Area Number |
13J02332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 智栄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 第二言語習得 / 日本人英語学習者 / ガーデンパス文 / 自己ペース読み実験 / 眼球運動計測 / 心理言語学 / 動詞情報 / 文処理 |
Research Abstract |
平成25年度は、日本人英語学習者が英語を理解する際の動詞の下位範疇化情報の影響を明らかにするため、統語分析において一時的曖昧性を伴う英語文の読み時間の計測により、動詞の下位範疇化情報が文構造の誤分析に影響するかを検討した。具体的には、(1)のような、動詞直後に目的語となり得る名詞句が続かない unbounded dependency structure の文構造において、自動詞構造でのみ用いられる動詞を使った文(1a)と、他動詞・自動詞両方の構造で用いられる動詞を使った文(1a)を比較した。さらに、前出の名詞句を動詞の直接目的語として分析した際の解釈が自然であり、動詞後のリージョンで再解釈を強いられる条件(1c)を加え、これらの文を読んでいる際のリージョンごとの読み時間を自己ペース読み時間計測実験により計測し、再分析にかかる処理負荷が動詞の種類によりどう異なるかを分析した。 (1a) When the audience watched the actor rested behind the curtain. (1b) When the audience cried the actor rested behind the curtain. (1c) That's the class that the lecturer taught about during the semester. 日本人英語学習者と英語母語話者の読み時間を比較した結果、日本人英語学習者は他動詞構造をとる動詞の時に前出の名詞句を動詞の直接目的語として分析する一方、自動詞構造でのみ用いられる動詞ではそのような文構造分析は行わないことが明らかになった。これにより、これまでの研究で示されていた、日本人英語学習者は動詞の種類に関わらず自動詞・他動詞両方の文で直接目的語分析を行うという結果は、early/1ate closure ambiguity を伴う文型特有の結果であり、今回のような unbounded dependency structure の文型においては、日本人英語学習者が動詞の下位範疇情報を文構造の初分析に用いていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで行ってきた自身の研究結果をふまえ、動詞の下位範疇化情報が日本人の英語文理解の漸次的処理にどう影響するかについてこれまでとは異なる文型を用いて実験を行った。これらの研究成果は、25年度内に国際会議において3件の発表を行っており、現在国際ジャーナルに提出する原稿を執筆中であることから、研究の内容、成果ともに順調に進展している評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には日本人英語学習者の英語理解における韻律情報を明らかにするため、Visual world paradigmを用いた眼球運動計測実験を5月に実施する予定である。また、平成26年10月からはマサチューセッツ工科大学(ボストン、アメリカ)に visiting scholar としての訪問が決定しており、現地で英語母語話者のデータを収集する予定である。
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Research Products
(6 results)