2013 Fiscal Year Annual Research Report
公的医療保険における医療機関および医師の統御に関する研究
Project/Area Number |
13J02355
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 浩平 北海道大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 公的医療保険 / 社会保障法学 |
Research Abstract |
本研究は、「公的医療保険における医療機関及び医師の統御」という全体構想のもと、公的医療保険において自由な医業と医療供給の確保を両立させる制度モデルの提示を目指す試みである。 第1年度に当たる平成25年度は、①修士論文の報告・公刊準備、②国内文献の調査・収集、③国外文献の調査・収集、④博士論文の構想の吟味を中心とした研究を実施した。 まず、前年度に完成させた修士論文について北海道社会法研究会で報告を行った。同研究会には、申請者の指導教員である加藤智章氏(北海道大学教授)の他、申請者と同じくドイツ公的疾病保険法を研究している松本勝明氏(厚生労働省)が参加した。同研究会での議論を経た結果、申請者の修士論文を公刊するにあたり、修正点や改善点が存在することが判明した。その中で最も重要なものは、ドイツ公的医療保険法が現物給付原則を採用したことが医療供給の確保と分かちがたく結びついており、同原則の検討を修士論文へ盛り込まなければならない、ということである。 また、国内外の文献を調査・収集した。日本法における文献はほぼ収集を完了し、内容の検討を行っている。ドイツ法にあっては、判例・学説ともに重厚な蓄積が存在することが判明した。もっとも、文献の中には国内に所蔵されていないものも存在する。 最後に、上記の作業によって得られた知見・示唆を元にして、博士論文の構想を吟味した。今年度は、主に日本法における問題の所在・検討対象と分析指針、比較対象であるドイツ法の制度構造について検討を行った。その結果、公的医療保険における「療養の給付」というシステムは行政処分を介在しないため判例が極めて少なく、日本法における問題の所在は必ずしも顕在的なものではない。よって、一度ドイツ法の検討を本格的に行うことで視座を相対化し、改めて日本法の問題の所在を検討しなければならない、ということが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
修士論文の公刊準備および博士論文の構想報告において、当初予定していなかった「現物給付原則」および「療養の給付」の2点を考察対象に加えなければならないことが判明した。それらが問題となった判例は(日本法においては)極めて少ないため、問題の所在、分析指針を明らかにするには多くの時間を必要とすることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、ドイツ公的疾病保険制度の考察に重点を移し、学説および判例を渉猟し、検討する。その際、特に重点が置かれるのは、前記「現物給付原則」および「療養の給付」の検討となろう。それによって得られた知見を元に、再度日本法の検討を行うこととしたい。これらの推進方策を達成するために、研究計画を一部変更する。平成26年4月から9月までドイツ・ミュンヘンにおいて在外研究に従事し、理論と実態という2つの視点から公的疾病保険制度を検討する。
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