2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J02390
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 針葉樹 / 樹高成長 / 貯水 / Transfusion tissue / cryo-SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
高木の樹高成長は樹冠上部の水ストレスが主要因となり制限されると考えられてきたが,樹高世界一のセコイアメスギでは針葉が受ける水ストレスが高さによらず一定であることが明らかになり,論文にまとめた(Ishii and Azuma et al. 2014)。 昨年度の樹高50mの秋田スギの調査結果では,樹冠上部ほど葉の貯水機能が高くなり,葉内の貯水や通水に寄与すると考えられるTransfusion組織の断面積割合が増大していた。当該年度は,夜明け前と日中に梢端と最下枝の葉を液体窒素によって樹上で凍結固定し,cryo-SEMを用いて葉内の組織と水を同時に観察した。すると,日中の水需要の高い際のTransfusion組織は細胞内の水が減少して細胞が収縮しており,蒸散停止後の夜明け前には再水和が起こって細胞の形状は復元していた。つまり、Transfusion組織はスポンジのように細胞の形状が変化して水を出し入れしており,水の貯留と供給の両方の生理機能を有することが示唆された(Azuma et al. in review)。 昨年度の3調査地の高齢ヒノキ林でみられた鱗状葉スケールでの高さ及び光環境にともなう形態的可塑性についてより詳細を明らかにするために,当該年度は毎月のシュートの定点観測(写真撮影)をおこなった。今後,さらに1年間定点観測を継続し,画像解析により鱗状葉の形成過程の垂直変化を明らかにする。 山梨県のアカマツ林では,最大樹高に達した樹齢100年および300年の個体において樹冠の様々な高さにある葉の光合成や水分生理特性などを調査し,高さと樹齢の影響を明らかにした。両樹齢において高さに応じた葉の生理的な順化がみられた一方で,高さにともなう水供給の困難に対する乾燥回避パターンが樹齢間で異なっていた。外的要因(樹形の変化による水分供給の変化など)と内的要因(老化による影響)が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の結果を受けて調査を展開し、それぞれ結果を得ることができた。アカマツ調査においては,当初の目的である高さにともなう葉の生理特性の変化を明らかにするだけでなく,樹齢の差異がもたらす影響についても研究を展開できた。
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Strategy for Future Research Activity |
秋田以外でおこなった屋久島での高齢の屋久スギおよび高知での高木のヤナセスギ調査の結果について解析をすすめ,異なる地域における種内変異を明らかにする。 高齢ヒノキの伸張成長に関わる鱗状葉形成過程について,当該年度に引き続きシュートの定点観測(毎月の写真撮影)をおこない,その後の画像解析により梢端と最下枝の葉で葉の形成過程を比較する。 異齢アカマツの研究では,樹齢間の葉の水分特性の違いの要因として考えられた外的要因および内的要因について,今後詳細に調べていく必要がある。
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Research Products
(6 results)