2013 Fiscal Year Annual Research Report
近世における南朝史享受をめぐる歴史資源の流通と人的交流についての研究
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13J02490
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
勢田 道生 皇學館大学, 文学部, 特別研究員(PD) (40580668)
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Keywords | 近世 / 南朝 / 史書 / 大日本史 / 大日本史賛藪 / 伝本研究 |
Research Abstract |
本研究は、近世成立の南朝関係の史書についての検討を通じ、南朝をめぐる歴史資源や言説の流通と変容の様相を明らかにするとともに、これに関する知的資源や知識人のネットワークを解明し、南朝史受容をめぐる学芸の諸様相や影響関係を明らかにすることを目的とする。平成25年度の研究計画としては、主に『大日本史』の伝本や成立過程についての調査・検討、および、柳原紀光『続史愚抄』の伝本についての調査を行うことを予定していた。このうち、『大日本史』の伝本や成立過程については、昨年度内に投稿した論文が刊行されたほか、同論考を補うべく発表した論考において、『大日本史』の二種類の写本について巻首目録を対照して示し、今後の検討の手がかりとしての情報共有を試みた。また、『続史愚抄』の伝本については、西尾市岩瀬文庫所蔵の柳原紀光自筆本について全巻の閲覧を終え、おおよその内容を把握することができた。ただし、同資料の内容は膨大であり、今後、更に詳細な検討が必要である。また、近世前期以後に広く流布した南朝関係の史書である『南方紀伝』について、口頭発表及び論文にて、同書は近世前期に諸地域で行われた史料の整理と流通の状況を強く反映したものであり、当該期の史書・軍書等について検討する際には、このような状況に注目することが重要であることを述べた。このほか、『大日本史』については、その成立過程を明らかにする上で重要なものと思われる伝本の存在を確認することができ、また、近世における『大日本史』受容を考える上で重要な『大日本史賛藪』の伝本および内容についても検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『大日本史』の伝本についての検討については、昨年度内に一定の調査・検討を終えて投稿した論文が、本年度に入って刊行され、また、同論考を補うものとして、『大日本史』の巻首目録を対照した論考を発表したほか、関連資料として、『大日本史』の重要な伝本二種の存在を知ることができた。また、近世における『大日本史』受容を考える上で重要な『大日本史賛藪』についても、検討を進める事ができた。この他、近世有職家の蔵書形成やその著述、また柳原紀光『続史愚抄』に関する文献調査も、順調に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は『大日本史』の伝本の検討を行ったが、その過程で、『大日本史』の注目すべき伝本二点の存在を知ることができた。両資料は『大日本史』の成立過程を考える上で重要なものと考えられるため、その内容について詳細な調査・検討を行いたい。また、『大日本史賛藪』についても、近世における『大日本史』受容の問題を考える上で避けて通る事はできない資料であり、伝本系統その他、基礎的な調査を行う必要がある。上記の点は、当初の計画には含まれていないが、26年度の研究対象に含め、検討を進める。この他、『南朝公卿補任』・『続史愚抄』等について、当初の研究計画に基づいて調査・検討を進めるとともに、近世における蔵書形成と人的交流についての検討のため、近世の公家・有職家の蔵書目録等について調査を進める。
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