2014 Fiscal Year Annual Research Report
農村社会の再編と外国人農業労働者のエスニシティに関する社会学的研究
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13J02614
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯田 悠哉 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 移住労働 / フィリピン人農民 / 季節就労 / 外国人技能実習制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、外国人技能実習制度を介して来日する農業労働者を対象に、かれらの出身地や就労先の農村社会の再編を踏まえつつ、当該の移住労働の構造と経験を対象化することである。本年度はとくに長野県の高冷野菜生産地の収穫期出稼ぎ労働に従事するフィリピン人農民の帰国後の生活に焦点をあて、現地調査や学会報告、論文の執筆を行った。今年度の調査と昨年度までの成果をとりまとめ、国際学会での報告や英文雑誌での発表に充てられたことは重要な収穫であった。 2ヶ月をかけて行った現地調査においては、とりわけ2011年に来日して収穫労働を担っていたフィリピン人農民若年男性出身集落でフィールドワークを実施した。具体的には、出稼ぎ後の生活・経済状況や、現時点での出稼ぎ経験への認識、今後の就労や生活の予定などについて、合計20名に対して聞き取りを行うとともに、かれらの生活を支える農業生産に関して、その作付け体系や水利状況の実地調査を行った。この作業によって、従来の研究ではフォローされることのなかった「出稼ぎ後」までを含めて、出稼ぎ労働プロセスの構造とかれらの経験について本研究がはじめて対象化することに繋がった。 また農民の季節出稼ぎ労働のプロセスを実現させる役割を果たすエージェントである海外雇用派遣会社(マニラ・ケソン市)に対して、聞き取り調査、および資料渉猟を2週間以上かけて行った。この作業によって、日本への農業季節労働者の輩出地について経年での変容を示すことにつながり、出稼ぎ労働プロセスにおけるエージェントの差配の影響の大きさを認識することになった。これは、従来は静的に捉えられていた移動プロセス自体が、政治的、社会的な力学によって大きく揺れ動くダイナミズムを持つことを提示しえる点で、新知見に結びつけることが可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査や学会報告、学術誌への投稿は概ね順調に達成した。しかし、計画どおりの順序で進んでいる訳ではない。昨年度まで取り組んでいた課題に先じるかたちで、今年度の成果を中心に成果発表をおこなったため、昨年度までの成果発表についてまだとりまとめきれていない部分が残っている。博士論文に向けてぜひ必要な部分であるので、次年度は取りこぼしのないように学会誌投稿などの成果発表に繋げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでの調査をとりまとめ、もう一つ学会誌への投稿を予定している。そのうえで、博士論文の執筆において絶対に必要な総論を練り上げていきたい。追加の調査も実施するが、基本は成果発表がメインとなる。 今後、懸念となりそうな問題は、追加調査と成果発表に対する時間配分の問題であり、総じて博士論文の脱稿までの差し迫った時間である。対応策として、指導教員との綿密な打ち合わせに基づき、無駄な寄り道をしないよう、完成から逆算して研究・調査の順序調整を図ることである。
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Research Products
(4 results)