2013 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の報酬依存的行動可塑性をもたらす神経回路制御機構の解明
Project/Area Number |
13J02785
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚本 聡美 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線虫C. elegans / モノアミン / 学習 / 温度学習行動 / PKA |
Research Abstract |
本研究は、線虫C. elegansの温度学習行動をモデル系として、モノアミンの神経回路制御機構の解明を目指すものである。温度学習行動とは、餌が存在する条件で飼育された線虫を、温度勾配のあるプレート上に置くと、飼育温度に移動するが、飢餓を体験した後に温度勾配上に置かれると、飼育温度には移動しなくなるという行動である。これまでに、本研究において、内在性のオクトパミン、セロトニンはそれぞれ飢餓情報と餌情報の伝達に必要であることが示された。すなわち、オクトパミン欠乏変異体では、餌なし条件で温度学習行動に異常を示し、セロトニン欠乏変異体では、餌あり条件で異常を示すことが明らかとなった。さらに、これまでに線虫において知られている全てのオクトパミン受容体の変異体について、温度学習行動を観察したところ、OCTR-1変異体が異常を示すことが明らかとなった。このことから、飢餓情報はOCTR-1オクトパミン受容体を介していることが示された。 さらに、本研究では、ほ乳類を含む様々な生物において、モノアミンの下流で機能する分子として知られている、PKA (Protein kinase A)に着目した解析を開始した。PKAが活性化状態にある2種類の変異体(gsa-1(機能獲得型)変異体、kin-2(機能低下型)変異体)において、温度学習行動を解析したところ、どちらの変異体も異常を示すことが明らかとなった。このことから、PKAを含むモノアミンシグナル伝達系が、線虫の温度学習行動においても、保存されている可能性が示唆された。今後、更なる解析により、ヒトをはじめとする様々な動物の快・不快といった情動のメカニズムの解明に重要な知見をもたらすものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、線虫C. elegansの温度学習行動に、内在性のオクトパミン、セロトニンがそれぞれ飢餓情報と餌情報の伝達に必要であることが示された。また、その関連分子についても、多くの新規知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、線虫C. elegansの温度学習行動をモデル系として、PKAを含むモノアミンシグナル伝達系の分子遺伝学的解析、および、神経回路制御機構の解明を行う。
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Research Products
(1 results)