2013 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導薄膜における人工ピンニングセンターの磁束ピンニング機構の解明
Project/Area Number |
13J02829
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴田 彰宏 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | REBCO線材 / 磁束ピンニング / 結晶成長 / BaMO_3ナノロッド |
Research Abstract |
SmBa_2Cu_3O_y(SmBCO)薄膜内に成長するBaHfO_3(BHO)ナノロッドの成膜環境(成膜温度・添加量)に依存したナノロッド形状の変化及び磁束ピンニング特性の変化に関する知見として、成膜温度を固定しBHO添加量を変化させた場合には、ナノロッドの幾何学的特徴(太さ・長さ・傾き)は大きく変化せず、数密度のみが変化する結果が得られた。一方で、BHO添加量を固定し成膜温度を変化させた場合では、成膜温度の変化に伴い幾何学的特徴に大きな変化が表れた。磁束ピンニング特性の観点からは、高成膜温度の場合に非常に強いピンニング力を有していることを確認した。 幾何学的に理想的な形状(連続的・直線的)でナノロッドが導入された薄膜が作製可能となったことで、BaMO_3(BMO)添加による臨界温度(T_c)低下要因の解明を行った。成膜環境及びナノロッド導入形態が類似したBHOとBaZrO_3(BZO)ナノロッドの比較、特にBMO添加量に対する格子定数及びT_cの関係から、T_cの低下要因が「格子歪」「格子ストレス緩和による酸素欠損」「元素置換」の複合要因で決定されていることが明らかとなった。さらに、複合要因となる主たる原因が格子ストレスであり、BMO材料のT_c低下へ与える影響の大小は、格子不整合ではなくBMO材料のヤング率であることが明らかとなった。BHOとBZOの場合ではヤング率の小さいBHOがより有利な材料である。 BHO添加によるSmBCO薄膜高特性化の原因解明のため、バイクリスタル基板を用いた超伝導特性の検討から、人工粒界での磁束フローに対してナノロッドのピン止め力が働くことで、人工粒界における電流パスが良好になることが明らかになった。 以上の知見は実用化線材応用及び新材料探索に対して、今後の指針となる重要な結果であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な目的とする磁束ピンニングの物理現象及びメカニズムの解明には至っていないものの、今後の研究に必要な高品質薄膜の作製が可能になり、研究目的の達成にめどが立ったため。さらに、主とする研究を進める中で、他の内容に関して非常に有益な研究結果が得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究成果により作製可能となった、理想的なナノロッドを有するSmBCO薄膜の評価から、磁束ピンニング機構及びナノロッド成長機構に関して研究を進める。具体的には、薄膜の様々な温度及び磁場下における電流特性の測定から、ナノロッド導入時の磁束状態を解析により磁束ピンニング機構の解明を行い、薄膜表面形態の観察からナノロッド成長機構の解明を行う。
|
Research Products
(10 results)