2013 Fiscal Year Annual Research Report
狩猟採集民の学習における「教示の不在」 --積極的関与はなぜ隠されるのか--
Project/Area Number |
13J02838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
園田 浩司 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 狩猟採集 / バカ・ピグミー / 子ども / 参加 / 相互行為上の調整 / 学習 / 作業配分 / 環境 |
Research Abstract |
アフリカ狩猟採集民の学習研究では, 子どもは狩猟採集技術・知識は特定の個人によって教示されるのではなく, 生業活動に参加し他者を模倣することで獲得され(Woodbum, 1982), 他方大人も子どもにあまり関わらないとしばしば報告されてきた(Draper, 1976)。報告者の論点は, 「狩猟採集社会の教示の存在の実証や, 大人が子どもに関わらない動機を問うのではなく, むしろ大人が子どもに「関わらない」という〈見え〉を作り上げている具体的な行為そのものに着目する点にある。 調査は, カメルーン共和国東部州に居住する狩猟採集民バカ・ピグミーの森のキャンプにて行われた。滞在中は各日に異なる子どもに同行し, 朝6時から夕方18時までの行動記録を行った。その記録と同時に相互行為分析用として, 子どもと大人の狩猟採集にかかわる共同作業の様子を動画に記録した。キャンプから戻った後, 2人のバカの男性の協力のもと, 発話や, その意味の確認など, 詳細な書き起こし作業を行った。対面相互行為の微細な分析から, 大人の以下のような行為の調整が明らかになった。 (1)狩猟採集作業への子どもの引き込み : 参加の達成のために, 大人は子どもが実践できる活動を状況に合わせてうまく配分したり, また作業が滞りなく進行するよう周囲の大人もまた, その大人を支えることが観察された。(2)子どもの自由な発話・行動の承認 : 大人が作業する横で, 子どもたちだけで相互行為の枠組み構築を大人が承認したり, 大人が子どもの発話を繰り返すことによって, 子ども自身が主要な話し手であることを, 当の子どもに示すなどの行為が確認された。(3)大人の視点の非強制, 子どもの注視への信頼 : 採集植物を見つけた子どもに対し, 子どもの応答をうまく引き出す質問を選択することで, 共同注視を達成することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査とデータの確保により, 研究課題で掲げた問題について, 少しずつ成果が上がりつつある。報告者は, 国内外で情報発信を積極的に行い, 3件の国内学会とシンポジウム, また2件の国際学会と国際シンポジウムにて発表を行った。また研究協力者として参加した「文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)『交替劇』(ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相 : 学習能力の進化に基づく実証的研究)研究項目A-02『狩猟採集民の調査に基づくヒトの学習行動の実証的研究』」報告書としてその成果の一部を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
カメルーン東部州に暮らす狩猟採集民バカ・ピグミーの大人―子ども間相互行為についての動画資料, およびそれと比較するための近隣農耕民ジメの大人―子ども間の相互行為についての動画資料を収集する。各研究項目について今後の研究計画の基本方針を記す。(1)大人の行為調整における行為の分類大人が子どもに接する際に表出する関与の仕方は様々である。その行為がその場でどのように生起するのかを点検し整理することで, 狩猟採集という生業様式との関係を明らかにする。(2)農耕民との比較農耕民の大人の行為調整と比較することで, バカの大人の行為調整を生業様式の点から特徴づける。(3)語彙の収集関与の方法について文化的・言語的側面から考える。
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Research Products
(4 results)