2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子認識機能の制御を目指した人工核酸の化学合成と気相分光による微細構造解析
Project/Area Number |
13J02918
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅見 祐也 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 核酸合成 / ペプチド核酸 / グアニン / 気相分光(赤外、紫外) / 量子化学計算 / レーザー脱離 / ナフタレン / TOF-mass |
Research Abstract |
核酸は生体中で遺伝情報の保持、伝達を担うだけでなく、特異な分子認識能を持つことからその基礎から応用に至るまでの様々な知見に興味が持たれている。近年、不揮発性の分子である核酸を非破壊的に気化して分光する技術が確立してきたため、その構造と機能を一分子レベルで詳細に解明することができるようになった。このような背景を受け、本研究では様々な人工核酸分子を合成し、その物性を精査することでその分子認識能を制御するための基礎的知見を確立することを主な目的としている。 本年の研究では、有機合成を一から学び、人工核酸の代表であるペプチド核酸(PNA)の合成に成功した。しかしながら、核酸塩基の中でもグアニンにはケト・エノール互変異性体が知られており、一般的にそのケト体は励起寿命が短いことが知られている。このため、この塩基を持ったPNAを感度良く観測することは極めて困難であった。そこで、PNA鎖の末端に励起寿命の長い発色団を導入することで、より高感度にその信号を観測することを目指した。その結果、PNAの信号が極めて強く観測され、そのUVスペクトルおよびIRスペクトルの測定にも成功した。量子化学計算により、観測されたPNAの構造を帰属したところ、これまで観測の難しかったケト体の構造であることが明らかとなった。 そこで、新たに発色団を導入する手法により短寿命な構造が観測できることの確証を得るため、グアニン塩基にメチル基を介して発色団を導入した化合物(GNap)を合成し、その構造決定を試みた。その結果、当初の予想通りケト体の構造が観測され、本手法の有用性が確認された。今後、標的分子に対して化学合成を用いて長寿命の発色団を導入する検出方法は、短寿命な核酸分子の気相分光において有効な手法として利用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年は初めて有機合成を勉強し、PNAの合成および構造決定を行うところまでを目標としていたが、発色団を新たに導入することで、これまで観測の難しかった分子種の測定を可能にする新たな検出方法を確立できた。この方法を気相中での多重衝突法を組み合わせることで、合成した人工核酸がどの程度効率的に塩基対を形成するかを評価することができるため、創薬のターゲット分子に対してこれまで得られなかった物理化学的な知見を与える手法として応用できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画当初はPNAと天然体との塩基対を形成し、バックボーン構造の違いが塩基対に与える影響について考察する予定でいた。しかし、核酸合成を学ぶ中で塩基対そのものの分子認識能に関しても情報が不足していることが分かった。 そこで来年度はPNAまたその他の人工核酸と天然体との塩基対形成を試み、その構造決定に着手する。この時、塩基対間でミスマッチが無く、強い水素結合を形成するために必要な条件を物理化学的に明らかにしたいと考えている。
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