2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02996
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松下 隆志 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ロシア / ソ連 / ロシア文学 / 現代文学 / ポストモダニズム / 社会主義リアリズム / アイロニー / チェチェン戦争 |
Research Abstract |
1. ミハイル・エリザーロフ論 1972年生まれの作家ミハイル・エリザーロフは2008年度ロシア・ブッカー賞受賞作『図書館員』(2007)において、忘れられたソ連作家が遺した小説が魔術的な力を得て現代に復活するという、ソ連へのノスタルジーを強く感じさせる作品を書いている。社会主義リアリズム研究者カテリーナ・クラークの理論を援用しながら、作家が社会主義リアリズムの本質を現代のコンテクストに置き直し、疑似ソ連的共同体の形成を通して失われた「家族性」の復活を描く過程を論じた。 2. 現代ロシア文学におけるロシア論 ウラジーミル・ソローキン、パーヴェル・ペッペルシテイン、ミハイル・エリザーロフという三人の、いずれもポストモダニズムの潮流と関係づけられながらも世代や出自を異にする作家たちの作品に描かれたロシアイメージを比較することによって、それらに描かれたロシア像の共通点と相違点を指摘した。 3. 現代ロシア文学におけるチェチェン戦争表象論 90年代半ばから00年代半ばにかけて創作されたチェチェン戦争を巡る小説や映画作品を取り上げながら、芸術表象における「アイロニー」の変遷を分析した。90年代半ばの作品ではアイロニーは古典作品の引用・改変という形で現れ、現実と表象の間にある乖離が問題となった。しかし、2000年前後になると、メディアの戦争表象を中心に現実の次元は消去され、記述の仕方次第で現実はどのようにも表象できるといったポストモダン的アイロニズムが優勢になっていった。さらに、2000年代半ばになると直接戦争を体験した若手作家が台頭したが、彼らの作品は既存の物語の枠組みを拒否することでアイロニーを脱しようとするものであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
|
Research Products
(4 results)