2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小寺 諒介 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アファインヤンギアン / Fock空間 / 箙多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度から引き続き行ったカレントLie代数の加群間のExt群の消滅に関する研究は,証明に問題があり,一旦保留とした. 26年度は新たにアファイン型ヤンギアンの表現に関する研究を行った.この代数はアファイン型箙多様体のトーラス同変ホモロジー群に自然に作用し,その表現論は箙多様体の理論と関係が深い.また,そのパラメータを特殊化して得られるLie代数は25年度に研究したカレントLie代数のアファイン版であり,カレントLie代数と類似の理論を持つことが期待されるが表現論の研究はほとんど行われていない. アファイン型ヤンギアンについて,以下で述べる結果を得た. Uglovは,レベル1のFock空間に有限型ヤンギアンの作用を定義した.さらにFock空間にある内積を導入し,それに関する直交函数のなす基底へのCartan部分代数の作用を書き下した.アファイン型ヤンギアンは有限型ヤンギアンを部分代数として含んでいるため,Uglovの定義した作用がアファイン型ヤンギアンの作用に拡張できるか,という問題が生じる. アファイン型箙多様体の局所化したトーラス同変ホモロジー群は,トーラス作用の固定点に対応する基底を持つ.二つの基底を対応させることでFock空間と局所化したトーラス同変ホモロジー群を同一視することができる.私は,Uglovが導入したFock空間の基底への有限型ヤンギアンの生成元の作用を書き下し,この写像が有限型ヤンギアンの作用と整合的であることを証明した.従って,Fock空間にアファイン型ヤンギアンが作用することがわかった. 27年度の課題として,上で述べた結果の高レベル版への拡張,パラメータを特殊化した場合への応用,アファイン型ヤンギアンの表現のテンソル積と付随するR行列の研究を考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では有限型箙多様体のみについて考えていたが,アファイン型の場合はより豊富な幾何学を持ち,表現論的にも興味深い.アファイン型の場合は表現論の研究に未開拓の部分が多いため,この場合も視野に入れて研究を行うのがよいと考えた.
26年度はアファイン型ヤンギアンの表現論について考察した.最も基本的なレベル1のFock空間については,代数的な構成と幾何学的な構成とを比較し,予想していた結果を得ることができた.このことについては評価してよいと考えている. しかしながら,この観察に当初予定していたより多くの時間がかかってしまい,論文を26年度中にまとめることができなかった.また高レベルの場合にもある程度の予測は立っているものの,実際に研究をすすめるにはいくつか障害が残っていると思われる.これらのことから「やや遅れている」と評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
Uglovはさらに,高レベルFock空間への有限型ヤンギアンの作用を定義している.箙多様体の理論からは,高レベルFock空間にもアファイン型ヤンギアンが作用し,その表現としてレベル1のFock空間のテンソル積になっていることが期待される.ここで,テンソル積構造はGuay-中島によって近年導入されたアファイン型ヤンギアンの余積を用いたものを考える.26年度に証明した事実を用いてこのことを示し,高レベルFock空間と箙多様体との関係を理解したい.高レベルFock空間の場合にはレベル1のときのような直交函数による基底は構成されていない.この場合にも箙多様体のトーラス固定点に対応する基底を導入しその性質を調べることによって,対称函数の組合せ論的な観点からも興味深い成果が得られるはずである.
上で述べた高レベルFock空間の問題はアファイン型ヤンギアンのR行列を記述する問題とも自然に関係している.Uglovによってレベル1のFock空間を有限型ヤンギアンの表現と見た時の分解則が得られている.この結果を用いて,アファイン型ヤンギアンのR行列と有限型ヤンギアンのR行列との関係を記述できると考えられる.そのためにアファイン型ヤンギアンの余積と有限型ヤンギアンの余積との比較を行い,26年度の結果と合わせて計算を行う必要がある.またR行列の計算には幾何学的なアプローチが存在すると思われるので,27年度はこうした代数的,幾何学的な考察を組み合わせたり比較したりすることでこの問題に取り組みたいと考えている.
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Research Products
(4 results)