2013 Fiscal Year Annual Research Report
連結による協力問題解決メカニズムの解明―実験と進化シミュレーションを用いた研究
Project/Area Number |
13J03067
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲葉 美里 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 協力問題 / 社会的ジレンマ / 信頼性の推測 / 内的帰属 / 社会的交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、協力問題の解決法として複数状況間の連結に着目し、連結によって協力問題がいかに解決されるのかを明らかにすることにある。そのために本研究では、以下の3つの点を検討する予定であった。【研究1】連結行動の、至近的な心理プロセスの解明【研究2】連結行動の心理プロセスを持つことの適応価の解明【研究3】連結メカニズムの協力問題以外への一般化可能性の検討。本年度は、研究1について2つの実験室実験を行った。 まず、内的属性の推測に基づいて生じる連結について検討を行った。その結果、内的属性の推測に基づく連結が生じた。しかし外的属性に関する情報も利用可能な場合は、内的属性に基づく連結は生じなくなり、これは内的属性の推測という心理プロセスによる連結は頑健さに欠く場合があることを意味する。なお、この実験の結果は国内学会においてすでに発表済みである。 次に、内的属性の推測に基づく連結が生じる範囲を検討した。人々が相手の内的属性に関する様々な情報を、どのような場面において有用だと判断するのかを明らかにするために、対人相互作用場面における自他の利害関係を操作し、連結が生じるか否かを検討した。実験の結果、裏切りの誘因の存在する状況では連結が生じるが、裏切りの誘因が小さい状況では生じないことが明らかになった。なお、この実験の結果は今後国内学会において発表予定である。 本年度の研究から、幅広い状況との連結によって協力問題が解決される可能性がある一方で、内的属性の推測という心理プロセスのみに頼っていては、連結が生じずに協力問題が解決されない可能性があることが明らかになった。これまでの研究では心理プロセスに関する考察がなされてこなかったため、連結による協力問題解決の可能性と限界に関してほとんど言及されてこなかった。その点を明らかにした点で、本研究の意義は大きいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するには、研究実績の概要に述べた3つの研究を行う必要がある。当初、本年度は研究1について検討し、研究2にも着手する予定であった。実際には、研究1に関する研究を行い、一定程度の成果を得ることができた。さらに、研究3として行う予定であった連結メカニズムの協力状況以外への一般化についても、その糸口となるようなデータを得ることができた。よって、研究2にはいまだ着手できていないが、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、【研究2】内的帰属に基づく連結の適応価の検討を開始する予定である。また、本年度の結果から内的帰属に基づく連結の脆弱さが示されたことに対応し、その脆弱さを補完しうる他のメカニズムの検討も行う予定である。さらに、本年度の実験結果をさらに分析し、連結メカニズムの協力状況以外への一般化についても考察を加える必要がある。
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Research Products
(4 results)