2014 Fiscal Year Annual Research Report
連結による協力問題解決メカニズムの解明-実験と進化シミュレーションを用いた研究
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13J03067
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲葉 美里 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 協力問題 / 社会的ジレンマ / 進化シミュレーション / 適応論的アプローチ / 間接互恵性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、協力問題の解決法として複数状況間の連結に着目し、連結によって協力問題がいかに解決されるのかを明らかにすることにある。そのために本研究では、以下の3つの点を検討する予定であった。【研究1】連結行動の、至近的な心理プロセスの解明【研究2】連結行動の心理プロセスを持つことの適応価の解明【研究3】連結メカニズムの協力問題以外への一般化可能性の検討。本年度は、研究2に関してコンピュータ・シミュレーションを行った。 研究2を開始するに先立って、連結に関する先行研究の知見を整理した。その結果、連結される社会的相互作用を、いくつかの特徴によって分類することが重要であることが予測された。その特徴とは、直接的な交換関係であるか間接的な交換関係であるかという区別と、相互作用の相手を選択可能か否かという区別である。連結行動を行うことが適応的となるメカニズムが、これらの特徴によって異なると想定される。そこで、まず、相手を選択することのできない間接的な交換関係に着目した。これに関して先行研究の不足点を補うコンピュータ・シミュレーションを行い、連結行動が適応的となる条件をより正確に明らかにした。なお、この研究結果は国内学会においてすでに発表済みであり、今後国際学会での発表が予定されている。次に、相手を選択することのできない直接的な交換関係に関する進化シミュレーションを行った。しかし、現在のところ間接的な交換関係とは異なり、連結行動が適応となる仕組みは明らかになっていない。 1年目の研究では、様々な状況との連結によって協力問題が解決される可能性があることが示された。本年度の研究によって、人々がそのような行動をとることが、部分的には適応的となる可能性を示すことができた。これは、協力問題の解決法として複数状況間の連結が理論的にも有望な回答であることを示す重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の特徴は、連結によって協力問題が解決されることを示すだけではなく、その適応的な基盤を明らかにするという点にある。その点で、本年度取り組んだコンピュータ・シミュレーションは目的達成のために最も重要なパートといえる。この観点から、社会的ジレンマ状況と連結される状況を概念的に整理し、その一部ではあるが適応的基盤を示すことができた成果は大きい。また、まだ検討を行っていない状況についても、本年度に構築したシミュレーションを元にして効率よく作成し、結果を得ることができると考える。よって、研究はおおむね順調に進展しているといえる
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、【研究2】において未だ適応的な基盤が明らかになっていない状況について、進化シミュレーションを用いて検討する予定である。そして、その結果を1年目で実験室実験から明らかになった心理メカニズムと対応させ、人間社会において連結によってどのようにして協力が維持されるのかを考察する。その後【研究3】として、連結メカニズムを協力問題以外へ一般化可能なのかどうかを検討する。すなわち、協力問題という一定のパラメータ特性を満たす場合にのみ連結が適応的になるのか否かを、さらにシミュレーションを用いて検討する。
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Research Products
(4 results)