2013 Fiscal Year Annual Research Report
ケーラーリッチフローのある種の変形とその自己相似解
Project/Area Number |
13J03077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケーラーリッチソリトン / ケーラーリッチフロー / 射影直線束 |
Research Abstract |
今年度は, Generalized Quasi-Einstein (GQE)計量という, Kähler-Ricci soliton (KS)を任意の偏極多様体に対して一般化した計量の安定性に関する間題を, admissible bundleと呼ばれる特別な射影東上で考え, 得られた結果を論文にまとめた. KSは, Kahler-Ricci flow (KRF)と呼ばれる時間発展方程式と関係がある. Tian-Zhuは, KSを許容するFano多様体上で, KRFの初期計量を上手くとると, KSにCheeger-Gromov収束することを証明した. これは, KSのある種の解析的な安定性を表す結果と言える. 一方, GQE計量は, 具体例は知られているが, その存在が数学的に何を意味しているのかは不明な部分が多い. そこで, GQE計量に対して, modified Kahler-Ricci flow (MKRF)と呼ばれる, KRFを一般化した時間発展方程式を定義し, Tian-Zhuの収束定理の類似を考えた. そして, 実際に特別な場合に解の収束が起こることを証明した. これは, GQE計量の安定性の定式化を与えており, 意義深い結果であると考えられる. また, 研究過程において, Tian-Zhuの正則不変量とMaschler-Tønnesenの不変量の間の関係式を求めることに成功した. 『ここで, 前者は一般のKSが存在するための障害であるが, 後者はadmissible GQE計量が存在するための障害である(admissible GQE計量とは, ある対称性をもつ特別なGQE計量のことである). この関係式は, admissible GQE計量に対してしか適用できないが, admissibleでない一般のGQE計量に対して, Tian-Zhuの正則不変量をどのように拡張すればよいかを示唆しているという意味で, 重要な式である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
射影直線束に研究対象を限定したことで, 当初予定していた研究手法から大きくずれ, 応用範囲も低くなったが, 一方で具体例を多く作ることができ, 分野の見通しは良くなった. また, 当初の予定よりも早く, 解の収束性を証明することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
不変量の構成に関しては, 幾何学的不変式論による解釈や, 射影埋め込みの際の, 外部データ(斉次多項式)を用いた表示等が知られているため, これらの観点からの一般化を試みる. 一意性および時間発展方程式の評価については, 引き続きcomplex Monge-Ampere方程式の理論に沿って研究を進める. 研究対象となる計量については, これらの理論に対して合理性を持った計量であることが望ましいため, 必要に応じて, その定義を適宜修正する必要があると思われる.
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