2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代半導体ゲート絶縁膜用の高誘電率材料における欠陥構造と絶縁破壊機構の解明
Project/Area Number |
13J03090
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森本 貴明 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 高誘電率絶縁膜材料 / シリコンカーバイド(SiC) / 点欠陥 / イオン注入 / 熱アニーリング / パワーデバイス / フォトルミネッセンス / 電子スピン共鳴 |
Research Abstract |
SiCの適用によるMOS-FET、IGBT等のパワーデバイスの高耐圧化を目的として、誘電率が高い(High-k)材料をゲート絶縁膜に適用して膜厚を厚くすることが検討されているが、欠陥によるリーク電流が懸念されている。そこで、LaAlO_3とYAIO_3に存在する欠陥と、イオン照射、光、熱による影響を解明した。 LaAlO_3とYAlO_3の単結晶バルクにエネルギー100keVのP^+およびB^+イオンを1×10^<15>cm^<-2>照射すると、両物質ともに、X線回折(XRD)ピーク強度と、結晶でのみ生じるEr^<3+>、Cr<3+>のフォトルミネッセンス(PL)強度が減少することから、結晶性が低下する事が分かる。YAlO_3ではそれに加え、XRDピーク位置シフトと、バンドギャップ近傍の光吸収増加から、格子間隔変化と局在準位生成が起こる。これらは絶縁特性低下に直結するため、とくにYAlO_3を用いる場合は、イオンがゲート絶縁膜を通過しない製造プロセスが必要である。 次に、両試料に3.50~6.12eVの光を照射した。LaAlO_3では4.3eV以上で光吸収増加、電子スピン共鳴(ESR)シグナル消滅が起き、電子・正孔対の生成が示唆されるのに対し、YAlO_3では目立った変化は現れない。よって、YAlO_3はLaAlO_3より光に対して安定と言える。また、両物質に酸素ないしは空気中熱処理を行うと、LaAlO_3では、光吸収増加やESRシグナル減少といった電子・正孔対の生成を示唆する変化が500℃から起きるのに対し、YAlO_3では1000℃まで殆ど変化が見られない。よって、YAlO_3は熱に対しても安定であると言える。 以上より、イオンに対してはLaAlO_3、光、熱に対してはYAlO_3の方が安定している。プロセス上の工夫により絶縁膜のイオン通過は回避可能であるため、熱・光に強いYAlO_3は、LaAIO_3よりも有望と判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の目的は(1)イオン照射の影響の解明、(2)研究成果の論文化であった。(1)に関しては、光吸収測定とPL測定から、結晶性低下と局在準位生成という2つの影響が存在する事や、さらに、局在準位生成はLaAlO_3では起こらず、YAlO_3では起きることなど、十分な知見が得られており、順調に推移していると考える。また、(2)についても、査読付英文論文が1件掲載され、さらに1件が投稿準備中、査読付和文論文が1件改訂審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究は概ね順調に進展したので、今後は、予定通りイオン照射や光により生じる欠陥を消滅させる手法の探索、SiC基板上に成膜したHigh-k薄膜に生じる欠陥の解明、欠陥が電気的特性に与える影響の解析を行う。なお、学会において、欠陥と電気特性の相関、および、イオンによる欠陥生成機構に関する質問を多く頂いたため、これらの解明に多くの時間を用いる考えである。前者に関しては具体的には、1-V、C-Vカーブを測定し、それらから示唆される局在準位と、PL、光吸収、ESR測定等から示唆される欠陥との対応関係を解明したいと考えている。また、後者に関しては、照射イオンによる元素のはじき出し等をシミュレーションソフト「TRIM」で計算し、その結果をPL、XRD測定結果と比較し、イオンによる影響をさらに詳細に解析する。
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Research Products
(15 results)