2013 Fiscal Year Annual Research Report
Belle実験におけるB中間子のレプトンへの崩壊を用いた荷電ヒッグス粒子探索
Project/Area Number |
13J03096
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
廣瀬 茂輝 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Belle実験 / Belle II実験 / MCP-PMT / 荷電ヒッグス粒子 |
Research Abstract |
本年度は、まずBelle実験をアップグレードしたBelle II実験で使われる、TOPカウンター用MCP-PMTを1.5T磁場中で試験するためのシステムを整備した。TOPカウンターはBelle II実験において1.5Tの磁場中において運用されるため、そこで使用される全500本以上のMCP-PMTの1.5T磁場中における増幅率や時間分解能などの基礎特性を事前に確認しておく必要がある。TOPカウンター全16機の製作スケジュールからこの測定を2014年度半ばまでに完了させる必要があるが、申請者が構築したシステムにより本年度7月に測定が完了する予定である。磁場中で500本以上のMCP-PMTの測定をした前例はなく、その測定結果は光検出器の研究開発という観点でも興味深い。申請者は、本測定における測定結果の一部を国際会議「RICH 2013」において報告した。 Belle実験データにおける荷電ヒッグス粒子探索については、2012年度にBaBar実験より報告されたB→D(^*)τν崩壊における標準模型予想からの3σ程度のずれに着目した。B→D(^*)τν崩壊は、当初着目していたB→τν崩壊によく似た崩壊であるが、D(^*)中間子が余分に生成されるために力学的自由度が大きくなり、さらに崩壊分岐比が100倍程度大きいために多様な解析が可能となる。申請者は、τ粒子がハドロンとニュートリノに崩壊する様式(τ→πνやτ→ρνなど)に着目した研究を開始した。特にτ粒子の偏極度を測定することで荷電ヒッグス粒子をはじめとする様々な新粒子に対して感度があり物理的興味が大きい。申請者はまずτ粒子偏極度の測定方法を考案し、原理的にτ粒子偏極度測定が可能であることを示した。現在、解析が比較的容易なτ粒子のレプトンへの崩壊を用いて、先行研究と照らし合わせながら解析フレームワークを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は修士課程に引き続きBelle II TOPカウンター用光検出器MCP-PMTに関する研究を進め、1.5T磁場中での検査システムを予定通り完成させた。一方で、当初の予定では本年度中にB→τν崩壊の解析を完了する予定であったBelle実験データ解析については、2013年にBaBar実験より発表された結果をもとに、より物理的興味の大きなB→D(^*)τν崩壊に方針を修正したことから遅れており、現在解析フレームワーク作りを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
B→D(^*)τνの解析を行う。まず、先行研究と同様にτ粒子のレプトンへの崩壊を用い、結果を先行研究と照らし台わせながら解析フレームワークを構築する。次にτ粒子のレプトンへの崩壊をハドロンへの崩壊に置き換え、解析を進め、まず崩壊分岐比を測定することを目指す。測定された崩壊分岐比は、基本的には先行研究において測定されたものと統計的な相関が小さいはずなので、測定結果を組み合わせることで統計誤差を抑制し、崩壊分岐比測定精度を向上させることができる。その後、得られたデータサンプルを元にτ粒子の偏極度測定を行う。
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Research Products
(2 results)