2013 Fiscal Year Annual Research Report
半自然草原における植食性昆虫の減少メカニズム‐植物群集・景観の変化による影響‐
Project/Area Number |
13J03127
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内田 圭 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生物多様性 / 植物 / チョウ類 / バッタ類 / 景観 / 農業生態系 / 中規模撹乱仮説 |
Research Abstract |
伝統的な人間活動により維持されてきた半自然草原は, 世界的にみても生物多様性の高い生態系である. しかし20世紀以降, 管理放棄や集約的農業などの土地利用形態の変化により, 生物多様性は世界名地で急激に減少している. 日本の半自然草原の面積は1900年代初頭の約500万haから2005年時に43万ha(国土の約1%)にまで減少したこと, さらに残存した草原でも質の変化が急激に進行している. 半自然草原の生物多様性を保全するには, 多様性減少をもたらす要因およびメカニズムを解明することが最重要であるが, 生物多様性が減少するメカニズムについてはほとんど明らかにされていない. 本研究では, 植食性昆虫の多様性減少メカニズムについて, 全種数に加え, 体サイズ, 食性幅をもとに機能群ごとの種数も解析した. それらに影響を与える小域・広域環境(ハビタットスケール)の影響から多様性減少のメカニズムを明らかすることを目的とした. 多年生植物、チョウ・バッタ群集は、伝統的営農地で最も多様性が高かった。一方、一年生植物は、集約的営農地と伝統的営農地で種多様性が高く、放棄地では低かった. 統計解析の結果から, 多年生植物が減少することで, チョウ・バッタ群集が減少することが明らかとなった. 多年生植物の多様性は, 撹乱頻の変化および周辺の二次林の面積の減少により低下することが明らかとなった. チョウおよびバッタ類の機能種群ごとの滅少傾向は, 機能群ごとに傾向が一貫しておらず, 特定の種群が減少することが生物多様性を減少させているのではないことが示唆された. どのような特性を持つ種が減少しているのかについてヌルモデル解析を実施したところ, 個体数がもともと少ないものが消失・減少している傾向にあった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた小域環境が生物多様性へ与える影響に加え, 新たに広域の景観要因も含めた解析の実施および論文を作成することが出来た. 本研究により, 農地における生物多様性滅少メカニズムについて多面的に評価することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 長野県の調査結果を解析し, 兵庫県で明らかとなった生物多様性の減少メカニズムと比較することで, 一般性と特殊性を明らかにする必要がある. さらに, 消費者群集の基盤となる植物の多様性がどのように変化しているのかについて, さらなるメカニズムの追求を行う.
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Research Products
(4 results)