2013 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルスにおける長鎖非コードRNAによる転写制御機構の解析
Project/Area Number |
13J03128
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石原 玄基 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | バキュロウイルス / DNAウイルス / 長鎖非コードRNA / 転写制御 / 経口感染 / 組織特異性 |
Research Abstract |
本研究では、バキュロウイルスのゲノムから転写されている新しいクラスの長鎖非コードRNAのウイルス感染時における機能を解析し、厳密なウイルス遺伝子の転写制御における役割を明らかにすることを目的としている。そのために、バキュロウイルスゲノム由来の長鎖非コードRNAの機能解析を網羅的に実施する。手法としては、個々の非コード転写物に対してプロモーターノックアウトウイルスを構築し, ウイルス遺伝子の発現制御と高次宿主制御との関連を調査する。 本年度は、バキュロウイルス感染時に転写される機能性長鎖非コードRNAの探索と機能解析を行うため、長鎖非コードRNA候補転写ユニットの有する転写開始点に点変異を導入したプロモーターノックアウトウイルスの構築を行った。組換えウイルスの作成は培養細胞における相同組換え法を用いて行い、現在までに21種のプロモーターノックアウトウイルスが完成している。 次にプロモーターノックアウトウイルスの培養細胞、及びカイコ幼虫における性状を調査している。具体的には、感染細胞において発現している転写産物に対するNorthern解析、出芽ウイルス・多角体の産生量、及び、カイコ幼虫に対する病原性(半数致死時間、および半数致死量)を調査している。 これまでに作成した21個のPKOウイルスのうち17個のPKOウイルスで表現型に差異が認められている。例えば、12個のPKOウイルスではNorthern解析において、近傍の転写産物のプロファイルに異常が見られた。また、mRNAの発現に対して影響が無いにも関わらず、経口感染力が野生株の1/1000以下に低下するプロモーターノックアウトウイルスも見出しており、より詳細な機能解析を進めている。 これらの結果は、バキュロウイルスの長鎖非コードRNAが遺伝子発現制御や、病原性に影響を与えていることを示すものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
21種のプロモーターノックアウトウイルスを構築し、性状解析を行った結果、バキュロウイルス感染時に転写される長鎖非コードRNAがウイルス遺伝子発現制御や病原性に寄与することを示した。また、mRNAの発現に対して影響が無いにも関わらず、経口感染力が野生株の1/1000以下に低下するプロモーターノックアウトウイルスも見出した、これは、組織特異的に機能するバキュロウイルス由来長鎖非コードRNAの存在を示す初めての結果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
機能性アンチセンス非コードRNAにおいては、センス鎖の転写抑制にかかわっていると推測できる。まずは、プロモーターノックアウトウイルスにおける非コードRNAとターゲット候補遺伝子の発現を調査する。その結果、負の相関が見られた場合、その作用機序の解明を行う。具体的にはセンス・アンチセンス鎖で2本鎖RNA (dsRNA)を形成しているのか、長鎖dsRNAから短鎖dsRNAを形成しているのか、短鎖dsRNAが産生している際には宿主のサイレンシング機構の中核であるRISC complex との関連について調査する。 また、新たに見出された組織特異的に機能するバキュロウイルス由来長鎖非コードRNAについては、感染幼虫の各組織に着目した詳細な解析を進めていく。
|