2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機養液栽培における根部病害の防除効果および根毛形成誘導の分子機構の解明
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13J03228
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 和樹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所 野菜病害虫・品質研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機養液栽培 / 根圏バイオフィルム / 病害防除効果 / Fusarium oxysporum |
Research Abstract |
有機養液栽培では根圏バイオフィルム形成、根部病害の防除効果、根毛形成の誘導など病理学的、生理学的に重要かつ特徴的な現象が認められる。本研究では、根圏バイオフィルムが及ぼす病害防除効果への影響を明らかにするため、根圏バイオフィルムが病原菌に及ぼす作用、および病害防除効果が失われる抗生物質・各種ストレスを探索し、病害防除因子の同定を目指す。本年度の成果を以下に要約する。 1. 有機養液栽培の培養液(有機培養液)中のF. oxysporumの形態観察を行った。F. oxysporumの菌密度は上昇せず、形態別の分類では、大型胞子は検出されず、小型胞子以外の胞子はすべて厚膜胞子を形成していた。厚膜胞子周辺には微生物が付着、もしくは定着している様子が観察された。よって有機培養液の根圏バイオフィルムの微生物生態系は病原性F. oxysporumの形態変化に影響を及ぼすことが明らかとなった。 2, 根圏バイオフィルムの病原性F. oxysporumに対する病害防除効果が失われる条件を検討した。有機培養液を滅菌処理(フィルター除菌、オートクレープ滅菌)、熱処理(常温~80℃)、および希釈処理(2~50倍希釈)した結果、滅菌処理、60℃以上処理、あるいは5倍希釈以上の有機培養液ではF. oxysporumの増殖抑制効果が低減することが明らかになった。病原性F. oxysporumの増殖抑制効果および根部病害抑止効果を保持するためには、生きた微生物の存在が一定量必要であることが明らかとなった。 3. 病害防除効果に影響を及ぼす微生物群の探索を行った。各種抗生物質(バンコマイシン、アンピシリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、ポリミキシンB)を根圏バイオフィルムにそれぞれ単独で処理(50ppm)した場合はF. oxysporumに対する増殖抑制効果に変化はなかったが、2種類併用では増殖抑制効果が低減した。以上の結果、増殖抑制効果には複数の微生物群が関与していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、根圏バイオフィルムが病害防除効果へ及ぼす影響を明らかにするため、根圏バイオフィルムが病原菌に及ぼす作用、および病害防除効果が失われる抗生物質・各種ストレスの探索を試みた。その結果、根圏バイオフィルムが病原菌の形態変化に影響を及ぼすこと、一定量の根圏バイオフィルム微生物群の存在が必要であるなど、当初の計画予定通りの成果を達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、有機養液栽培での植物体における防御応答機構および根毛形成誘導の解析を行う。根圏バイオフィルムによる誘導抵抗性にはエチレン・ジャスモン酸経路が、根毛形成誘導にはオーキシンとエチレン経路が関与しているため、トマトおよびシロイヌナズナにおける野生株と植物ホルモンの非感受性および生合成変異体を有機養液で栽培し、各種病原菌に対する防除効果および根毛形成・形態を明らかにするとともに、根部のtotal RNAを鋳型にRT-PCRによる抵抗性誘導関連遺伝子群の定量的発現解析を行う。
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Research Products
(3 results)