2013 Fiscal Year Annual Research Report
障害者運動の社会的連帯の国際比較研究--共働実践の制度化に伴うジレンマに着目して
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13J03339
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 綾香 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 障害者運動 / 共働実践 / 社会運動研究 |
Research Abstract |
本年度は、調査については本研究の研究主題である「共働実践」についての調査と、障害者就労に関わる団体の活動に関する調査を行なった。成果発表については、主に以前から継続して続けてきた聞き取り調査の結果を分析し、雑誌論文や学会報告での報告を行った。 障害者運動における共働実践の内容を明らかにするために、NPO法人「わっぱの会」の「ワークショップすずらん」で参与観察を行った。この調査データを①健常者メンバーの障害者メンバーへの態度、と②障害者メンバーの意識、に着目して分析したところ、次のことがわかった。①健常者メンバーが障害に応じた意図的な役割分担をするものの、それ以外の健常者メンバーの働きかけは最小限にとどめられ、健常者メンバーと障害者メンバーとが原則同じ作業に就き、障害者に任される業務もあったこと。②障害者メンバーには、仕事への責任を自覚しているメンバーとそうでないメンバーとはいたが、障害の有無にかかわらずメンバーは同じ評価基準を採っていたこと、である。すなわち、「すずらん」において、障害者と健常者との、先行研究とは異なる関係が明らかとなった。この結果は、名古屋大学社会学会において発表した。続いて、「わっぱの会」における健常者メンバーの加入と活動参加について、アンケート調査や聞き取り調査の結果から、事業性と変革志向性との共振という要因を明らかにした。研究論文については、名大社会学論集に査読付き論文が掲載され、学会報告も、7月の東海社会学会および10月の日本社会学会で報告することができた。加えて、NPO法人共同連から依頼を受け、8月の大会において講演を行った。 他にも、障害者就労にかかわる団体、NPO法人共同連、NPO法人共生型経済推進フォーラムのイベント等への参与観察、聞き取りを行った。国際比較についてはアジア障害者国際交流大会等へ参加し、障害者就労政策の前提が労働にある台湾や韓国と前提を福祉におく日本という図式が明らかとなった。 以上の通り、本年度の本研究についてはおおむね順調に目的を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、「わっぱの会」における参与観察をすすめ、障害者の共働実践をおこなう障害者運動において、その実践が先行研究での障害者就労とは異なることを明らかにすることができた。加えて、そこでの健常者メンバーが運動に加入していく要因とその後の変革志向性の受容の要因を明らかにすることもできた。これらの結果を学会誌論文、学会発表によって公表し、さらに結果の一部を調査対象団体である共同連の年次大会で発表するなど、社会へ還元することもできた。「わっぱの会」以外の調査も進めており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度調査における「NPO法人わっぱの会」の「ワークショップすずらん」での調査結果の分析を進める。海外の団体における実践および日本国内の団体の実践についても引き続き調査を進める。平成26年度の調査について、研究実施計画では主に海外での質的調査を主に行う予定となっていたが、日本国内において、①当事者の家族・教師等による運動、②当事者本人による運動、に関する調査も行う。これは、本研究の主題である「共働実践」について明らかにする際、平成25年度の海外調査の知見から、前提の違いによる働き方の違いについて比較することが有益と判断したためである。対応する団体での参与観察を実施し、分析を行う。調査結果は学会での発表および学会誌への投稿を考えている。
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Research Products
(6 results)