2014 Fiscal Year Annual Research Report
演奏のコミュニケーションを支える文化・行動基盤:音響情報と視覚情報の相互作用
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13J03351
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
正田 悠 同志社大学, 文化情報学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽演奏 / ヴァイオリン / コミュニケーション / 観客効果 / 身体動作 / 心拍 / 国際研究者交流 / 英国 |
Outline of Annual Research Achievements |
「作曲者」、「演奏者」、「聴衆」と辿る音楽のコミュニケーションにおいて、演奏者は、作曲家が楽譜に記した楽曲のニュアンスを自分なりに解釈し、自身の身体を巧みに動かすことで演奏を構築している。聴衆は演奏を鑑賞することで楽曲の感情的ニュアンスを受け取り、生理的な反応(心拍の変化等)を引き起こす。演奏者と聴衆がともに会するコンサート場面では、聴衆の存在や反応が演奏者の表現に影響を及ぼすと考えられる。本年度は、本研究課題のコアとなるコンサート実験を実施し、10人のヴァイオリン演奏者と総計60人の聴衆役大学生から、演奏者および聴衆の心拍および身体の動きのデータを得た。演奏に対する聴衆の評価も得た。さらに別の大学生50人に対して、録音した演奏音を呈示する実験も行った。本研究課題で予定された実験は全て終了し、データを得ることができた。現在、得られたデータの分析中である。 分析結果の一部はすでに正田・阪田・Williamon (2015) において報告した。昨年度訪問した王立音楽大学のAaron Williamon教授との共同研究により、演奏者の心拍について「複雑性」という新たな観点から最新の分析を取り入れることができた。この成果として、超絶技巧とも呼ばれる非常に高いテクニックを聴衆の前で演奏するように要求されると、非常に高く心拍数が上昇し(心拍が160近くまで上昇することもある)、さらに心拍の複雑性が低下することがわかった。 以上の研究成果に加え、「ライブ録音とスタジオ録音を聴き手は区別することができるか」という観客効果に関する研究がFrontiers in Psychologyに掲載された。この論文の内容はすでに5件をこえる一般向けメディアに紹介されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における実験を完了するとともに、演奏者の心拍についてマルチスケールエントロピーを用いた最新の分析を行い、その有効性を確認した点、またその成果を本年度中にアウトプットできた点により、(1)当初の計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度に得た種々の指標を分析し、国内外のジャーナルへの投稿を行う。
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Research Products
(10 results)