2013 Fiscal Year Annual Research Report
配糖体天然物の触媒的位置選択的全合成と糖類の位置選択的グリコシル化法の開発
Project/Area Number |
13J03416
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 裕紀 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機触媒 / エラジタンニン / 立選択的修飾 / 全合成 / グリーンケミストリー / 保護基 / アシル化 / 配糖体天然物 |
Research Abstract |
申請者は糖関連物質合成の格段の進歩のための、独創的な触媒反応の開発とこれを利用した糖類の新規合成戦略の一般化を目指している。平成25年度は、有機分子触媒を用いた糖類の位置選択的アシル化を基盤として多くの生理活性が報告されているエラジタンニン類の全合成を中心に研究し、3つの生理活性天然物の全合成を達成した。具体的には、安価なグルコースを出発原料として、5工程でストリクチニン、6工程でテリマグランジンIIおよびプテロカリニンCに導いた。全合成の過程で、光延反応の条件による無保護グルコースを用いた一段階立体選択的グリコシル化反応を開発した。また、有機触媒による反応制御と基質本来の反応性を組み合わせることで、グリコシドのワンポット位置選択的ジアシル化に成功した。無保護のグルコースの5つの水酸基を高度に識別し、糖水酸基の保護基をひとつも使用することなく位置選択的に官能基を導入していった点が特徴である。このアプローチにより、既知の合成例と比べて工程数を半分以下に短縮することができた。さらに、抗腫瘍活性を示すことが報告されているコリアリインAの全合成も検討した。コリアリインAは2つの糖部とアグリコン部からなる巨大なポリフェノール配糖体である。アグリコン部であるビアリールエーテルジカルボン酸を没食子酸から合成し、無保護グルコースをグリコシルドナーとするジカルボン酸の一段階立体選択的ジグリコシル化に成功した。 近年、持続可能な社会の実現を目指したグリーンケミストリーの概念が広く普及し、環境に負荷をかけないモノづくりの新手法の開発が望まれている。化学合成で目指す指針は、廃棄物の削減や触媒反応の導入などがあるが、保護基は最終生成物には含まれない廃棄物となるため原子効率を著しく低下させる要因となる。本年度の研究では、糖水酸基に保護基を使用することなく生理活性天然物に変換するという極めて効率的な全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コリアリインAの全合成は完了できなかったが、構造類似天然物であるストリクチニン、テリマグランジンIIそしてプテロカリニンCの短段階全合成を達成した。これらの全合成の過程でグルコースの保護基を使用しない連続官能基導入法を確立できた。この手法を基盤とすればコリアリインAの全合成も実現可能であり、研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで得られた知見をもとに、計画通り抗腫瘍活性を有するコリアリインAおよびプロスタグランジンE2の放出阻害活性を持っ天然物であるアンゴロシドCの全合成に取り組む。アンゴロシドCの全合成に際しては、当初の合成戦略には含まれないが、無保護グルコースをグリコシルドナーとする立体選択的O-グリコシド形成反応の開発も検討する。
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Research Products
(5 results)