2014 Fiscal Year Annual Research Report
配糖体天然物の触媒的位置選択的全合成と糖類の位置選択的グリコシル化法の開発
Project/Area Number |
13J03416
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 裕紀 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリコシル化 / coriariin A / 全合成 / 配糖体天然物 / 二量体天然物 / 立体選択性 / 保護基 / グリーンケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
配糖体化合物は生理活性物質の宝庫として知られており、糖関連物質の精密合成法の開発が盛んに研究されている。本研究では、天然に豊富に存在するグルコースの新しい物質変換法の開発を目指して検討を行っている。 平成26年度は、前年度の全合成研究で独自に見いだした無保護グルコースを用いる一段階での立体選択的配糖化反応について、糖受容体の一般性の検討と天然物合成を行った。従来のグリコシル化反応ではアノマー位に活性化基、その他の水酸基に保護基を用いる必要があり、こうした保護(活性化)中間体の合成に多段階操作を浪費してしまう点が問題になっていた。一方、我々の手法では、安価なグルコースそのものから一工程で立体選択的に配糖化できる点が特徴であり、実際に15種以上のカルボン酸をβ選択的に配糖化した。また、本法を用いて β-アシルグリコシド天然物である tecomin, thotneoside C, および perilloside B のグルコースから一段階での全合成を行った。 さらに、計画書に合成ターゲットとして記載した抗腫瘍活性ポリフェノール配糖体 coriariin Aの全合成を検討した。Coriariin Aは1986年、奥田らによってドクウツギの葉より単離、構造決定された二量体天然物である。我々は標的天然物のアグリコンに対する無保護グルコースを用いる立体選択的ジグリコシル化を鍵工程とし、coriariin A の対称構造を東西へ同時に構築していくこととした。没食子酸から合成したジカルボン酸アグリコンに対し、以前に最適化したグルコースを用いる配糖化条件に付したところ、二カ所のグリコシル結合が同時に制御されたジグリコシドが中程度の収率で得られた。得られた生成物を東西に同時に修飾することで、天然物の対称構造の一挙構築に成功し、グルコースからわずか 8工程で coriariin A に導いた(既知全合成はグルコースから15工程)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載した coriariin A の短段階全合成を完了した。当初の合成ルートとは多少相違が生じたが、既知のcoriariin A の全合成例(K. S. Feldman, JACS, 2000, 122, 7396)に比べて工程数を約半分に削減できた。また、グルコースそのものを糖供与体とした立体選択的グリコシル化反応の一般性を示し、保護基に頼らない次世代の配糖体合成の実現に向けた成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、糖供与体に無保護グルコースを用いるカルボン酸の立体選択的なグリコシル化反応の一般性を精査した。今後は、多糖や糖タンパク、糖脂質といった単純糖質以外の複合多糖の効率的な化学合成を目指し、糖受容体に無保護糖を用いる位置選択的なグリコシル化法の開発を推進していく。
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Research Products
(3 results)