2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03593
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北梶 陽子 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / 情報共有 / 共通目標の共有 / 監視 / 情報公開 / ゲーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的ジレンマ状況において相互協力の達成のためには共通目標を共有していることが重要である。これまでの社会的ジレンマ研究では、行動履歴や相手の人柄といった公開される情報の種類に着目されており、あくまで相手の選択を予想し、非協力を検知するための監視としての機能として情報公開は捉えられ、この機能が重要視されてきた。しかし、監視や罰則といったサンクションは常に協力行動をもたらすとは限らず、むしろ非協力行動を引き起こしてしまう場合も存在する。本年度の研究では、情報公開を監視とは異なる側面から捉えるために、監視としては機能しにくい情報公開であっても協力行動をもたらすことを例証する。 具体的内容:真偽は問わず自分の行動についての情報を公開しなくてはならない機会がある条件と、その機会のない条件を設定し、協力行動に差があるか比較した。自分の行動に関する情報を公開しなくてはいけない条件では、公開した情報に誤りがあったとしても何らかの罰を与えられることはなく、さらに他者からは真偽を確かめることができないようになっており、非協力行動を発見するための監視としては機能しにくい条件として設定した。結果、情報を公開する機会がある条件では、より多くの協力行動が見られ、さらに他者の役割に関する情報が共有されていた。 意義:情報を公開する機会があること自体が情報共有につながり、相互協力に繋がるということを示したことは、共通目標の共有過程の一部を明らかにしたという意義があると考える。 重要性:情報公開において相互協力をもたらすためには、他者がどのように行動したかということを正確に知ることだけではなく、他者からは真偽を確認する術がないとしても自分がどのように行動したか公開する機会が担保されていることが重要な要件であることを例証し、監視機能を追及するだけが情報公開の要件ではないということを示した点から重要性を評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、情報公開には単なる監視機能とは別に、協力を促進する機能があることを示した。この点を例証できたことは社会的ジレンマ問題を含む合意形成に不可欠とされる共通目標の共有過程を検討するうえで示唆に富んでおり、研究上大きな成果である。また、この研究の前段となる監視罰則が非協力行動をもたらすという内容の研究が『心理学研究』に掲載されたことは、心理学的に意義のある知見として認められたと考える。これらの点から、研究を実施するという点においても成果として発表するという点においてもおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず今年度の成果をSimulation & Gamingという英文誌に投稿する予定である。この成果は、7月に実施されるthe 46th International Simulation and Gaming Association conferenceにおいて発表を行う予定であり、すでに学会論文として投稿しており、審査結果が届き次第、修正を行っていく。並行して、英文誌の投稿原稿を完成させる。さらに、既に刊行された査読付論文も含め、これまでの成果を博士論文としてまとめていく。
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