2014 Fiscal Year Annual Research Report
POLARBEAR2による宇宙背景放射偏光観測を用いたインフレーション理論の検証
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13J03626
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
井上 優貴 総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実験的宇宙論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 宇宙論 / ミリ波 / サブミリ波 / 電波 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者はPOLARBEAR-2(PB-2)実験において極低温光学システムの開発を行ってきた。特に報告者が行った事は従来の実験の10 倍の統計を達成するために必要な、PB-2の低温光学系の開発である。 報告者はまず焦点面の大型化に必要なアルミナレンズの開発と評価を行った。アルミナは低コストで大型化が容易で、高屈折率のため薄いレンズを作成できる利点がある。薄いレンズは広い焦点面に渡って収差を抑制する事が可能である。収差の大きな光学系は、小さな偏光パターンの分離が困難となりB モード探索の感度が減少する。したがって、アルミナを用いた大型レンズは B モードの検出に必要不可欠な技術である。申請者はレンズの光学試験を行い十分な性能を持つ事を示した。 PB-2はミリ波吸収体を用いてビームサイズを定義するので、吸収体の性能がビームに影響を与える。また、装置内の反射は疑似偏光を生成するため抑制する必要がある。そのためには、極低温光学チェンバーの内面にミリ波吸収体を配置する必要がある。報告者は B モードの検出が可能な黒体として、新しいミリ波吸収体を開発し、十分な感度を満たす事を評価した。 報告者は PB-2 の熱設計を行い、赤外線吸収フィルターの開発を行った。従来の赤外線吸収フィルターをPB-2に用いると中心温度が上昇する事でノイズ源になってしまう問題があった。報告者は研究1年目にアルミナが従来のフィルターと比べて 1000 倍の熱伝導を持つ性質を利用してアルミナフィルターを開発した。しかし、アルミナは表面反射が高いため、アルミナの両面に大型の反射防止膜の作成が必要である。そこで、研究2年目に報告者は表面反射を抑制する干渉膜を開発し、大型化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
報告者の平成26年度の目標は光学要素試験を終えた光学素子を組み合わせ実際の光学系を作成し評価する事である。平成26年度はこれらの一連の評価を完了した。特に著しい進展はアルミナフィルターの大型化技術開発の成功と新型黒体の開発である。開発したこれらの光学素子を極低温光学チェンバーに配置し評価を行った。 報告者はこれまでにB-mode観測に必要不可欠な、アルミナフィルターの開発を行って来た。チリでの試験観測を行うにはこのアルミナフィルターの大型化が必要不可欠である。昨年度は、アルミナフィルターの大型化に必要な反射防止膜の方法を新たに開発し、実際に大型のフィルターを開発する事に成功した。これは、アルミナレンズの反射防止膜にも応用できる技術であり現在はこれらの検討を行っている。この技術は現在論文を発表する準備をすすめており、当初の計画以上に進展した。 また、光学系のビームを定義する為には十分に吸収率の高い黒体が必要不可欠である。申請者は新たに観測周波数に黒性能を合わせた新たな黒体を開発した。これらによって、十分な冷却が期待でき、ノイズ源である迷光の遮断が可能となったこの技術は現在特許申請中であり期待以上の成果が見られた。 これらの技術開発によって、現在は検出器と光学系を統合した最終評価試験を行っており、チリでの観測に向けて当初の計画以上に計画が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度であり、これまでに開発してきた技術を統合した最終評価試験を行う。最終評価試験ではチリでの観測と同様の条件で7588個の検出器アレイを評価する必要がある。最終評価試験で報告者が明らかにする事は、検出器と光学系を連結した状態での観測感度と光学系のビーム性能である。 平成26年度に開発した技術によって光学系の評価は終了した。本年度は検出器と光学系を連結し、外から実際のチリの空に見立てた疑似偏光信号を入射する事によって、実験感度を評価する。現在は疑似偏光信号を作る為の光源として、これまでに開発した黒体の指向性を高める開発を行っている。この評価系を用いて世界最高感度を達成する。 さらに、検出器と光学系を統合した系に疑似光源を走査する事でビーム評価を行う。これらのビーム評価は最終的なB-modeのスペクトルと密接に関係しているため、すべての検出器において回折限界を満たす事を確認する必要がある。これらの評価結果をシミュレーションと比較し、フィードバックをかけながら、回折限界をみたす光学系を構築する。 これらの光学評価を経て、十分な感度が得られる事を示す事ができれば、チリのアタカマに設置し観測を開始する。
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[Presentation] Thermal and optical characterization for POLARBEAR-2 optical cryostat2014
Author(s)
Y. Inoue, P.A.R. Ade, Y. Akiba, K. Arnold, A.E. Anthony, M. Atlas, D. Barron, A. Bender, D. Boettger, J. Borrill, S. Chapman, Y. Chinone, A. Cukierman, M. Dobbs, T. Elleflot, J. Errard, G. Fabbian, N. Stebor,C. Feng, A. Gilbert (他 48 名)
Organizer
SPIE
Place of Presentation
Montreal
Year and Date
2014-06-30 – 2014-07-04
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