2013 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザーを用いる超短パルス電子線の発生-超高速現象解明と環境計測応用-
Project/Area Number |
13J03662
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 大宜 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多光子イオン化質量分析計 / 小角試料導入法 / ダイオキシン類 / 超微量分析 / 超短パルス電子線 / 光電子イオン化 / 光電子付着イオン化 |
Research Abstract |
A)イオン化部の改良とダイオキシン類の超微量分析 1)小角試料導入法の開発と従来試料導入法との検出感度の比較 レーザー光と試料分子流の相互作用領域を拡大する小角試料導入法を開発した。小角試料導入法と従来試料導入法を用いて、ダイオキシン類を測定し、検出感度を比較した。この結果、小角試料導入法において2.5倍の検出感度の向上に成功した。 2)ダイオキシン類の超微量分析への応用の検討 申請者が以前報告した高繰り返しピコ秒レーザーによる多光子イオン化質量分析計と小角試料導入の組み合わせは、最も高い毒性を持つ2,3,7,8-4塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシンにおいて5.6fgの検出を可能にする。これにより、血液中のダイオキシン類分析が可能になった。 B)フェムト秒レーザーを用いる超短パルス電子線の発生 飛行時間型質量分析計(TOF-MS)のリペラー電極にフェムト秒チタンサファイアレーザーの第3高調波(267nm)を照射し、超短パルス電子線を発生し、TOF-MSで検出した。 C)超短パルス電子線イオン化法の環境分析への応用 1)光電子イオン化による陽イオンの発生 Bで発生した超短パルス電子線を電場で40eV以上加速し、クロロベンゼンをイオン化し、TOF-MSで検出した。得られたマススペクトルは、データベースのスペクトルに類似していた。 2)光電子付着イオン化法による陰イオン化の発生 Bで発生した超短パルス電子線を10eV以下に加速し、クロロベンゼンをイオン化した。得られたマススペクトルにはClが観測されたが、未だ脱プロトン化イオンは観測されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A)イオン化部の改良とダイオキシン類の超微量分析では、目標の1fgの検出には到達しなかったが、血液中のダイオキシン類分析への応用を可能にした。B)フェムト秒レーザーを用いる超短パルス電子線の発生に関しても、発生した超短パルス電子線を質量分析計で確認した。さらに、2年目の研究である環境分析への応用に着手し、陽イオン、陰イオンが観測できたため、「①当初の計画以上に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の計画通りに研究を推進する。引き続き、超短パルス電子線をイオン化源に用いたイオン化法の開発を行う。多光子イオン化と超短パルス電子線を用いた光電子イオン化、光電子付着イオン化法の3つの手法を環境汚染物質の分析に応用する。また、従来のナノ秒レーザーや真空紫外ランプを光電子の発生のため用いた研究と比較し、超短パルス電子線の優位性を実証する。さらに、超短パルス電子線とフェムト秒レーザー光によるポンプープローブ法による化合物の電子遷移や緩和過程について調査する。
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