2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03694
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 隼人 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 新経済地理学 / コミットメント / 微分ゲーム / 租税競争 / ロビー活動 / 自国市場効果 / 集積と分散 / 空間経済学 |
Research Abstract |
平成25年度は、(1)集積経済下の租税競争の動学分析を完成させるとともに、(2)政治経済学的な観点に注目した分析に取り組んだ。 (1)集積経済下の動学的租税競争分析 : 本研究は、無限期間にわたる2国間の租税競争の結果は、両国の租税政策に対するコミットメントの有無によって異なることを明らかにした。特に、財の輸送費用が低く、企業の集積しようとする力が強い場合には、競争初期での大幅な減税にコミットできた国が多くの企業を獲得することができる。しかし、租税政策に対するコミットメントは常に望ましいわけではなく、租税スケジュール策定時点で予期していなかったショック(経済危機や自然災害など)が生じた場合には、当初のスケジュールに固執し続けることはもはや最適ではない。これらは、2000年代以降低税率によって海外企業誘致に成功したものの、財政破綻後も低税率を墨守せねばならないという、現代のアイルランドが直面するジレンマをよく説明するものである。研究成果を論文にまとめ、国内外の学会で報告を行った。年度当初は分析を3国以上へ拡張することを予定していたが、複雑化を避けて2国の分析に専念した。 (2)政治経済学的側面に注目した集積経済下の租税競争分析 : 本研究は、資本家(企業の所有者)のロビー活動によって影響を受ける政府によって展開される、2国間の静学的租税競争を分析している。小国ではより低い税率、大国ではより高い税率が設定されることで、小国が大国よりも多くの企業を獲得することになる。この結果は、先行研究で知られている「市場規模の大きな国がより多くの企業を獲得する」という自国市場効果と正反対であるという点で興味深い。論文の形にまとめるとともに、複数の学会で研究成果の報告も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった多国間の動学分析に取り組めなかったものの、国際学術誌に投稿中であった集積経済下の動学的租税競争の論文は、改訂要求をいただいた。政治経済学的租税競争の論文については、学会発表において多くの有益なコメント、また内容を評価する旨のコメントを得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
動学的分析の論文の改訂作業を行い、平成26年度中に国際学術誌に公刊させることを目指す。 学会発表を通じて得られたコメントを生かし、政治経済学的分析の論文をより洗練させ、平成26年度中の分析の完成に努める。
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Research Products
(5 results)