2013 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能画像・拡散テンソル画像解析による不眠症患者における情動機能障害の機序解明
Project/Area Number |
13J03726
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
元村 祐貴 九州大学, 芸術工学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 不眠症 / 機能的MRI / 拡散テンソル画像 / 情動 |
Research Abstract |
本年度は研究実施計画に記載した研究課題「不眠症患者における情動に関連する脳活動の検討」の研究計画に沿い、不眠症患者16名、対象健常者16名に対するMRI課題を実施し、顔表情課題実施時の脳血流を計測、各群での比較検討を行った。申請者は以前に実施した研究において、睡眠不足時には前頭葉の制御領域との接続低下により情動の中枢と呼ばれる扁桃体が恐怖表情に対して過剰な活動を示すことを見出したことから、不眠症患者においても同様の反応があることを予想した。しかし本研究の結果では予想に反して恐怖表情に対する扁桃体の過活動は認められず、逆に幸せ表情に対する線条体の活動が健常者に比較して低下していることを認めた。線条体は中脳からドーパミン系の投射を受けており、ポジティブな情動反応に関連するといわれている領域である。この結果は、睡眠不足ではネガティブな情動反応の増加、不眠症患者ではポジティブな情動反応の低下という、それぞれが異なる情動障害メカニズムを有していることを示す最初の知見である。不眠症は複数の大規模調査のメタ解析によってうつ病のリスクとなることが示されていることから、睡眠の異常と情動障害の相互作用メカニズムを明らかにするに当たり、ポジティブな反応の低下に焦点を当てるべきであることを示唆する結果となった。 また同時に二つ目の研究課題「不眠症患者における情動に関連する脳白質構造の検討」の研究計画に沿い、現時点の各群16名について拡散テンソル画像の撮像も実施している。今後は論文化に向け、不眠症患者と対象健常者それぞれ30名を目標にデータを取得中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の仮説とは異なる結果となったが、課題中の脳機能画像撮像により、不眠症が精神疾患の発症につながるメカニズム解明の一歩となる結果を得た。拡散テンソル画像のデータも継続して取得できており、来年度には脳機能と構造の関連も調査できる予定であることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果は不眠症患者のポジティブな情動反応低下を示唆するものであった。それを踏まえ、患者群に認められた情動に関わる脳機能の変化に関連する脳構造の変化について仮説を立て、拡散テンソル画像による白質神経連絡の不眠症患者と対象健常者の差異との関連を見ていく必要がある。
|
Research Products
(6 results)