2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙のダイナミクスの解明に向けた超弦理論の数値的研究
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13J03744
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 祐太 総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 初期宇宙 / 古典運動方程式 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
現在の宇宙論によれば、初期宇宙ではインフレーションによる急速な膨張の後、ビッグバンを経て冪的な膨張に移ると信じられている。一方で超弦理論で予言される10次元時空からどのように現在の4次元時空が現れるのかは未だ良く理解されていない。IIB行列模型は超弦理論の非摂動定式化と期待され、10次元の時空のダイナミクスを記述する。そのため、初期宇宙のダイナミクスを超弦理論の立場から理解するためにもIIB行列模型の研究は重要性を持つ。 今年度の研究では主に、ローレンツ型IIB行列模型の数値計算によって1. 初期宇宙における膨張則を調べると共に、2. 膨張に伴う古典化の検証を行った。 1.の研究では、より長く時間発展を見るためローレンツ型IIB行列模型をある近似のもとで簡略化した2つの模型を考案し、従来では計算コストの面で困難だった大きな行列に対して数値計算を可能にした。同時に, 比較的小さな行列サイズでより効率的に時間発展を調べる方法としてくりこみ群的手法を確立した。これらの模型について、9次元空間から3次元空間だけが指数関数的に膨張すること、その後冪的な膨張に転移することを見た。 一方で、時空が膨張している場合には古典近似での記述が良くなることが予想される。このことは古典的な時空の描像や場の理論(ここでは標準模型)が行列模型でどのように実現されるかということと強く関係している。そこで2.の研究では、この古典化の現象が実際に起こり得るのかを数値的に検証した。 1.で用いた簡略化した有効模型について、適切な古典運動方程式を立て、数値計算から求まる配位がこの方程式を満たすことを確かめた。それにより、時空が膨張している場合には古典化が実際に起こることを数値的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2つの有効模型を用いて数値的に時空の指数膨張と、冪膨張への遷移が定性的に見られた。並行して行った古典解の解析では古典化が起こることが確かめられたが、有効模型に関して現状では模型が手で壊したローレンツ対称性が連続極限で回復しない等の問題も抱えている。
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Strategy for Future Research Activity |
有効模型においてローレンツ対称性が連続極限で回復しないという問題について、まず本来のIIB行列模型に対して同様の解析を行いこの問題が起こらないかを確かめる必要がある。もしこの問題が模型由来であれば、正則化が適切であるかを議論する必要がある。膨張という現象が特別な場合に起こっているのだとすれば、その正則化に物理的な意味があるかもしれない。 これらの問題が解決された暁には、標準模型の実現に関連して、得られた古典的配位の代数構造を調べることを始める。
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Research Products
(5 results)