2014 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙のダイナミクスの解明に向けた超弦理論の数値的研究
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13J03744
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 祐太 総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 数値シミュレーション / 初期宇宙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の今年度の進展は主に、ローレンツ型IIB行列模型の有効模型を用いた大規模数値計算と、模型の持つカットオフ依存性の数値解析に分けられる。 前者の研究では、ローレンツ型IIB行列模型を簡単化した模型(10次元bosonic模型)について時空の時間発展を数値計算により調べた。今までよりさらに長い時間発展を見るため(=より大きな行列を扱うため)にスーパーコンピュータ「京」を用いて大規模数値計算を行った。これにより、この簡単化した模型において、10次元から膨張した4次元の時空が長い時間にわたり冪的な膨張をすることが示された。 これまでの研究で、超弦理論から導かれる本来のローレンツ型IIB行列模型で4次元時空が指数関数的に膨張すること、ここで述べた簡単化した模型で冪的な膨張が見られることが分かった。この結果を宇宙論の立場から、初期の宇宙がインフレーションの後に輻射優勢期へ移るシナリオと比較すると、この簡単化した模型が時空の膨張が進んだ時点(元の模型ではまだ調べられていない)での有効模型となっている強い示唆が得られる。 後者の研究では、模型で導入される赤外カットオフの効果を数値的に解析し、模型のとるべき正則化の方法について議論した。ローレンツ型IIB行列模型には本来の模型のカットオフである行列サイズNの他に、時空のサイズを有限にするための赤外カットオフが導入されている。そのためラージNの極限とともにこの赤外カットオフの効果が消えるような正しい正則化をする必要がある。そこでこの研究では、模型における赤外カットオフの形式をより一般的に拡張しそのラージNでの効果を数値的に解析することで、この模型で赤外カットオフが取るべき形式に対しての指標を与えた。これに従い簡単化した模型について実際に解析を行い、ラージN極限で消えるような赤外カットオフの形式を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有効模型(10次元bosonic模型)の巨大な行列サイズに対して冪的膨張が確認されたことは前年度までに得られた知見を補強し、研究概要で述べたような重要な結果と考えられる。ただ、大型並列計算機による数値シミュレーションに予想より多く時間を費やしてしまい研究の進捗が多少遅れつつある。 また、前年度で問題としていた赤外カットオフの効果については、新たに手法を考案し、我々の模型におけるカットオフの効果をより明確化させることができた。その結果、カットオフの形式にどのような修正が必要であるかを議論できる段階に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、継続して大型並列計算機を用い、これまでの研究結果から期待される、有効模型(10次元VDM模型)で指数膨張が終わることなく続くことを数値計算で実際に見る。 また、今年度で簡単化した模型に適用した赤外カットオフ効果の議論を、より本来の模型に近い有効模型(フェルミオンの寄与を部分的に取り入れた模型)に対して行い、ラージNの極限で消えるべき赤外カットオフの形式を同定する。
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Research Products
(5 results)