2014 Fiscal Year Annual Research Report
心理物理実験とシミュレーションによる薄明視下の視知覚変容に関する研究
Project/Area Number |
13J03804
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
吉本 早苗 日本女子大学, 人間社会学部, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 視知覚 / 薄明視 / 運動視 / 環境座標表現 / 遡及的推測 / 暗所視 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境光の変動により大きく変容する運動視に着目し、薄明視における運動知覚への錐体・桿体系の同時機能の影響を実験的に推定することを目的とした。平成26年度は以下の成果を得た。
(1)先行刺激により後続の運動方向が曖昧な多義運動刺激(テスト刺激)の見かけの運動方向が一義に定まる視覚運動プライミングの効果を複数の薄明視レベル下で測定し、錐体と桿体の寄与率が同程度となる範囲でプライミングが消失することを示した。これは、錐体系と桿体系における時間応答の差により、両系を介した視覚情報の時空間的統合が不完全になることを示唆している(国際学会1件)。また、この薄明視範囲においては視野安定に関わる環境座標表現が構築されないことを見出した(査読付国際学術誌1件、国際学会1件、国内学会1件)。以上の研究成果についてはさらにデータを集め、現在米国の査読付学術雑誌に投稿中である。
(2)薄明視では錐体からの情報と桿体からの情報が統合されず、環境座標表現が構築されないことから、視覚系が明所視・暗所視とは異なる方略を用いて運動を認識している可能性がある。そこで本研究では、その方略の一つとして後付けに基づく認識方法である遡及的推測(postdiction)を仮定して実験心理学的に検討した。まずは見かけの運動方向が曖昧なテスト刺激を提示し、続いて運動方向が明確にわかる運動刺激を提示したところ、薄明視においてのみプライミングが遡及的に生じることがわかった。これは、薄明視では錐体と桿体が同時に機能することによる問題点が遡及的推測により補償されていることを示唆する(国内学会1件、ベストプレゼンテーション賞受賞)。以上の研究成果については論文としてまとめ、現在米国の査読付学術雑誌に投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は当初の計画通り視覚情報の時空間的な統合を定量的に評価し、心理実験データに基づいて錐体と桿体が同時に機能する時の視覚情報処理モデルの基礎を構築することに加え、米国の学術雑誌において査読付原著論文を刊行するに至った。それ以外にも、国内の学術雑誌に査読付原著論文が掲載されるなど、当初の計画以上の進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った心理実験から、1)錐体系と桿体系の寄与率に基づく両系の時間応答の差により視覚情報の時空間的な統合が不完全になること、2)薄明視では明所視・暗所視とは異なる方略により視覚情報が統合されていることが示唆された。平成27年度は、これまでに得られている心理実験データに基づいて薄明視を再現するコンピュータシミュレーションを作成し、錐体と桿体が同時に機能する時の視覚情報処理モデルの精緻化を行う。
|
Research Products
(10 results)