2014 Fiscal Year Annual Research Report
生体系における自己組織化・秩序化過程の統一的解明-水を主役として-
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13J03866
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾嶋 拓 京都大学, エネルギー理工学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 溶媒の並進配置エントロピー / 自己組織化・秩序化過程 / 排除体積効果 / 溶質-溶媒多体相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
剛体球溶媒では水中における蛋白質の折り畳み・変性を一部再現できないが、その理由は明らかにされていなかった。剛体球溶媒と水との違いを明らかにするために、それぞれの溶媒における蛋白質の折り畳み・変性への溶媒エントロピーの効果の違いを調べた。剛体球溶媒と水では溶媒のエントロピーの溶質-溶媒間多体相関成分(つまり混み合い効果)が大きく異なっていることがわかった。水中での蛋白質の安定性において、混み合い効果が支配的な役割を果たしており、この成分が水の特性を決定づけていることがわかった。 グラム陰性菌が持つAcrBは3つのプロトマーから成り、プロトマーの状態を回転させることによって、薬剤の取り込みと排出を実現しているが、全体的な回転機構および回転とプロトン結合・解離との関係は未解明であった。AcrBの回転における溶媒のエントロピーの変化を分析し、回転の物理描像の構築を行った。AcrBのそれぞれのプロトマーの分子内パッキングが非対称になっており、溶媒のエントロピー効果によって、各プロトマーの大きな構造変化を実現できていることがわかった。 折り畳みにおける溶媒のエントロピー変化と水素結合の変化の効果を取り入れた熱安定性の指標を提案し、この指標を用いて、アミノ酸の置換によって熱安定性がどの程度上昇または下降するかを予測した。残基の置換による熱安定性の指標の変化と変性温度変化の実測値との間に高い相関があることがわかった。この予測手法は、パラメタフィッティングを用いていないにも関わらず、従来の予測手法と同等の予測性能があることがわかった。 以上の研究成果から溶媒の並進配置エントロピーが蛋白質の折り畳みや機能などの自己組織化・秩序化過程において主要な役割を果たしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、蛋白質の熱安定性における溶質-溶媒間の多体相関の重要性、AcrBの多剤排出機構、アミノ酸置換による安定性変化のメカニズムを溶媒の並進配置エントロピーの観点から解明することに成功した。これらは、自己組織化・秩序化過程において溶媒の並進配置エントロピーが主要な役割を果たしているという我々の考えを指示する結果であり、溶媒の並進配置エントロピーの多体相関成分を基軸とした普遍的な理論体系を構築する上で大きな発展である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、溶媒の並進配置エントロピーの観点から、①塩の添加効果、②ABCトランスポーターの多剤排出機構、③自由エネルギー関数とバイオインフォマティクスの手法を組み合わせた立体構造構造予測法の開発、④アミノ酸置換による熱安定性変化の予測、についての研究を行う。溶媒の並進配置エントロピーが様々な生体系自己組織化・秩序化過程において主要な役割を果たしていることを明らかにし、溶媒の並進配置エントロピーの多体相関成分を基軸とした普遍的な理論体系を構築することを目指す。
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Research Products
(9 results)