2013 Fiscal Year Annual Research Report
θ真空を考慮した格子QCDによるQCD相構造の解明
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13J03944
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 純一 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子色力学(QCD) / 格子QCD / 化学ポテンシャル / θ真空 / 符号問題 / QCD相構造 |
Research Abstract |
今年度American Physics SocietyのPhysical Review Dに論文を投稿し、それが掲載された。この論文の重要なところは、再重み付け因子のテイラー展開法による有限の化学ポテンシャル(μ)領域の先行研究よりも、虚数化学ポテンシャル(μ1)領域からの解析接続の方が計算精度に優位性があることを示したところにある。私はこの成果を日本物理学会や研究会などで発表した。特に、格子QCDに関する最大の国際会議であるLATTICE2013において研究成果を発表したことは、国内外の研究者にμ1領域からの解析接続による研究をアピール出来て、とても意義深いことであった。 この成果は平成24年度より研究を進めてきたもので、符号問題のある領域に対してどのようにアプローチすべきかの、ある一つの回答を行った。研究課題であるθ真空の物理を調べるためにはQCDの有限のθ領域を研究する必要がある。しかし格子QCDでは有限θ領域で符号問題を有している。μ1領域からの有限μ領域への解析接続による研究で先行研究との優位性を見た今、研究実施計画に記載したクォーク質量項のParity-even近似を行うべきか、虚数θ領域からの解析接続をすべきか、検討が必要である。 符号問題への更なるアプローチとして、クォーク数密度の計算を行った。クォーク数密度を用いて状態密度を計算することにより、化学ポテンシャルによる符号問題とは関係なく物理量を計算する手法を試みている。この手法が成功すれば有限θ領域に応用されることも考えられ、とても重要な研究である。この研究については、日本物理学会九州支部例会及び日本物理学会第69回年次大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでプログラム開発に使ってきたスーパーコンピュータ(SX-9)では計算スピードが速いが、新しく使用しているスーパーコンピュータ(FX10など)ではプログラムがチューニングされていないため、計算スピードがとても遅い。そのプログラムのチューニングに時間を要しているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
クォーク質量項におけるParity-even近似の計算に関して、新しく使用しているスーパーコンピュータでのプログラムのチューニングを進めていく。チューニングが完了し計算効率が軌道に乗ってきたら、θ真空の効果を全て取り入れたプログラムも作成する。 有限のμやθの領域は「符号問題」という共通の問題を抱えている領城である。この符号問題の解決方法を見つけることはθ真空の物理を解明することにつながる。その観点から、有限μ領域での符号問題解決にも尽力し、有限θ領域の符号問題にも応用したい。
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Research Products
(7 results)