2013 Fiscal Year Annual Research Report
フェレドキシンと亜硫酸還元酵素の電子伝達複合体の静的・動的構造の形成機構の研究
Project/Area Number |
13J03956
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金 宙妍 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子伝達 / 亜硫酸還元酵素 / フェレトキシン / 静電的相互作用 / 非静電的相互作用 / 結晶構造解析 / 熱測定 / 溶液NMR分光学 |
Research Abstract |
FdとSiR間の静電的相互作用の寄与を調べるために、塩濃度依存的なSiRの活性や分子間親和力の変化に着目した。分子・残基レベルにおける情報を得るために、等温滴定熱測定(ITC)、SiRの活性測定、溶液NMR測定を行った。NaClの濃度を0から100mMまで変えながらITC測定を行った。ITCの結果から、静電引力による発熱がエンタルピー的にFd : SiR複合体の形成を駆動することが分かった。さらに、NaClの濃度が高まるとFdとSiR間の静電的相互作用がエンタルピー的に不利になり、親和力が低下することが見出された。しかし、複合体形成反応に伴う系のエントロピー変化は、NaClの濃度と関係なく正であり、脱水和による疎水性効果もFd : SiR複合体形成に寄与することが分かった。つまり、FdとSiRの複合体形成には、静電的相互作用と非静電的相互作用の両方が重要であることが、分子レベルでかつ熱力学的に明らかになった。一方、NaCl濃度に対して、Fd依存的SiR活性は、50mM NaClで最大値を見せるbell-shapedであった。さらに、野生型SiRの活性が最大なる50mM NaClでは、FdとSiR間の分子間相互作用が最適化されると考えられた。次は、分子間相互作用のNaCl濃度依存性を、^<15>Nの安定同位体ラベルをしたFdと溶液NMRを用い、アミノ酸残基レベルで調べた。Fdの多くの酸性や極性残基がSiRとの相互作用に重要であることが再び明らかになったが、Fdの非静電的残基もSiRとの相互作用に寄与することが見出された。塩濃度の上昇とともに、SiRとの接触部位は狭くなるが、荷電や極性残基と疎水性残基の寄与は両方存在していた。これらの結果から、SiRの最大活性は静電的・非静電的相互作用の微調整によるエネルギー的かつ構造的に最適化された複合体形成の結果であると提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FdとSiR間の分子間静電的相互作用の理解が当初の目的であり、達成された。さらに、当初の目的の達成を超えて更なる重要な二つの結論が得られた。上記に述べられたように生化学的・生物物理的手法を用い、①FdとSiRの分子間相互作用には、「静電的相互作用」とともに「非静電的相互作用」も重要であることが明らかになった。②SiRの最大の酵素活性は、FdとSiR間の分子間静電的や非静電的相互作用のバランスによって、エネルギー的・構造的に最適された電子伝達複合体を形成の結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「11」で結論付けた二つのポイントに関して更なる研究を推進する。①FdとSiR間の分子間相互作用に、非静電的相互作用の重要性も明らかになった。非静電的相互作用を評価するために、有機溶媒を混合した溶媒を用いて、SiRの酵素活性やFdとの分子間相互作用を調べる。加えて、非静電的相互作用に関与する残基を置換した変異体を作製し、生化学的・生物物理的にその影響を調べる。②葉緑体内は、試験管内のさらさらする環境ではなく、様々な分子が混存するために有効濃度が非常に高まると考えられる。葉緑体内の環境をより反映した条件下におけるFdとSiR間の分子間相互作用と活性との関連性を調べるために、molecular crwodinge ffectに着目する。様々なクラウダーの濃度を変化させながら, SiRの活性やFdとの分子間相互作用の変化をITCとNMRを用いて調べる。
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Research Products
(1 results)