2014 Fiscal Year Annual Research Report
フェレドキシンと亜硫酸還元酵素の電子伝達複合体の静的・動的構造の形成機構の研究
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13J03956
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金 宙妍 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子間相互作用 / 静電的相互作用 / 非静電的相互作用 / 亜硫酸還元酵素 / フェレドキシン / 結晶構造解析 / NMR / ITC |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度までの研究成果は、生化学的手法と生物学的方法を組み合わせ、FdとSiRの分子間の相互作用がSiRの活性に重要であることを見出し、両蛋白質間の分子間相互作用は、静電引力によって支配されることを明らかにした。 平成26年度は、FdとSiRの分子間相互作用のより総括的な理解のため、両蛋白質間の非静電的相互作用の役割に着目し、分子間親和力や結合様式の変化及び基質特異的なSiR活性の変化主に調べた。分子・残基レベルおける生化学的・生物物理的理解のために、部位特異的変異体の解析、SiRの活性測定、ITCと溶液NMR分光学を用いた。 静電SiR変異体に加えて、両蛋白質間の界面に存在しながら疎水性を低下させた非静電SiR変異体を作製した。静電SiR変異体の顕著な活性の低下に比べ、非静電SiR変異体からは活性の変化が見られなかった。ITC測定から、静電SiR変異体とFd間の相互作用による反応熱は観測されなかったが、非静電SiR変異体は野性型SiRとほぼ同じ反応熱と結合の熱力学的パラメータが得られた。また、静電SiR変異体を加えてもFdのNMRピークの変化はなかったが、非静電SiR変異体はFdの多くのピークを変化させた。Fd分子の真中部位とC末側に違いが観測されたが、全体的に野性型SiRと似ている変化パターンが見られた。非静電的相互作用をさらに詳しく調べるために、亜硫酸以外に、他方の2種類のSiRの基質(亜硝酸とヒドロキシルアミン)を導入し、SiR活性測定を行った。静電SiR変異体では基質による活性の変化がなかったが、非静電SiR変異体は基質選択な活性の変化が見られた。 以上の結果から、非静電的相互作用は、静電的相互作用程分子間相互作用を左右する因子ではないが、FdとSiR間の分子間相互作用を繊細に微調整し、活性に影響を及ぼすことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、フェレドキシンと亜硫酸還元酵素の分子間相互作用を静電的相互作用に加えて、非静電的相互作用にも着目して、より包括的に研究を進めた。電子伝達複合体形成の物理化学的特性を明らかにする成果を得るとともに、亜硫酸還元酵素の酵素学的特性にも影響を及ぼす要因となることを実験的に示した。また、分子クラウディングの観点からも研究を広げ、そのための実験系の開発にも順調に着手している。 国内外の学会発表も行い、成果の公表の観点からも研究活動はスムーズに進んでいる。特に、ドイツのフライブルクで開かれた「Sulfur metabolism in plants」シンポジウムで発表し、その成果がThe Springer Series in Plant Ecophysiologyで出版される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
酵素が実際に機能する生体内は、試験管内のような蛋白質濃度が低い環境とは異なり、非常に密集した環境である。蛋白質の有効濃度が上昇され、分子間相互作用が促進されて、試験管内の分子間相互作用の様式とは異なる可能性が高いと考えられる。このような高い有効濃度を考慮したクラウディング条件下で相互作用を解析する。 1.体内の密集した状態を模倣した条件下での解析 3種類の人工的クラウダー(ficoll70、polyethyleneglycol70、dextran70)やウシ血清アルブミンを高濃度に共存させて測定する。単体のSiRやFdに、クラウダーの濃度を段階的に上げながら二次元NMR測定を行う。溶媒条件は、できるだけ生理条件を考慮する。NMR感度や細胞内有効濃度を考慮して測定条件を最適化すると同時に、濃度依存的な単体状態のFdやSiRの構造変化を観測する。次に、ITC測定を行う。クラウディング剤存在下でセルのSiR(野生型)に対してシリンジのFd(野生型)を滴定して反応熱を観測し、複合体形成の熱力学的解析を行う。クラウディング剤の有無条件での結果を比較してさらなる情報を得る。そして、NMRやITCの結果を考慮し、最適化した測定条件で野生型やSiRやFdの系統的な変異体をもちいた生化学実験(酵素活性)を行う。 2.実際の細胞内の条件での相互作用の解析 大腸菌における15N標識SiRあるいは15N標識Fdの共発現を確認する。溶媒条件、大腸菌の濃度、NMR測定のパラメータなどを検討しながら、NMRチューブ内で大腸菌のin cell NMR観測ができる条件を徹底的に調べる。そして、大腸菌のまま超高磁場NMRや極低温プロ-ブを用いてNMR測定を行い、感度が悪い場合はhigh-resolution magic angle spinning NMRを導入し、感度や分解能を上昇させる予定である。
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Research Products
(4 results)