2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機PCETモジュールを有する超分子クラスターを用いた多電子移動反応触媒
Project/Area Number |
13J04037
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
岡村 将也 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸素発生 / プロトン共役電子移動 / 人工光合成 / 触媒 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多電子移動を伴う物質変換反応(酸素発生反応、二酸化炭素還元反応など)を高効率で促進する金属錯体触媒の構築である。本年度は、①鉄5核錯体の詳細な酸素発生触媒機能の評価と、②低い酸化電位(低過電圧)で駆動する酸素発生触媒の開発をテーマに研究を行った。①のテーマでは、安価で豊富に存在する鉄を用いた5核錯体が高い酸素発生触媒活性を示すことを初めて見出し、さらにその反応機構を推定することができた。しかし、改善すべき課題として、比較的過電圧が高い(~450 mV)という点が挙げられる。そこで②のテーマとして、酸化と同時にプロトンが解離するプロトン共役電子移動(PCET)を利用することにより、電荷の上昇を抑え、より低い過電圧での酸素発生の実現を目指して研究を進めている。具体的には、プロトン供与サイトを有する3,5-bis (benzimidazolyl) pyrazole (H_3bip)を配位子に用いて、新規鉄5核錯体[{FeII(μ-H_2bip)-3}-2-FeII2FeIII(μー0)]<3+>を合成することに成功した。錯体の溶液に対して塩基を添加し、紫外可視吸収スペクトルの変化を追跡した結果、塩基の添加に伴ってプロトンが1つずつ解離することが確認され、3つのプロトンが解離したとき錯体が中性となるため沈殿することが分かった。本錯体のサイクリックボルタンメトリーを測定した結果、鉄のFe(III)/Fe(II)に相当する電子移動に伴う4つの酸化波が観測され、それぞれの酸化電位は以前の錯体より大きく低電位シフトしていることが分かった。これは、高い電子供与性を有するH_3bip配位子に由来すると考えられる。また、水の存在下では、酸素発生による触媒電流だと考えられる電流値の増加が、以前の錯体より低い電位から始まっていることから、低過電圧で駆動する酸素発生触媒として期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、①鉄5核錯体を用いた高効率な酸素発生触媒の機能評価②プロトン共役電子移動を活用した低過電圧で駆動する新規鉄5核錯体の創製、という2つのテーマにおいてどちらも大きな進展があった。テーマ①では、鉄5核錯体の酸化還元挙動と反応性について、様々な測定やDFT計算により検証し、酸素発生触媒機構に関する知見を得ることができた。テーマ②では、解離性プロトンを有する新規鉄5核錯体の合成を行い、その分光学的、電気化学的性質を明らかにした。特に、期待した通り、酸素発生に伴う触媒電流が観測される電位を下げることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、酸素発生機能についてより詳細に調べるとともに、pH変化が錯体の酸化電位や触媒機能へ与える影響について評価を行う。具体的には、溶液のpHを変化させたときの紫外可視吸収スペクトルとサイクリックボルタンメトリーの測定を予定している。しかし、本錯体は様々な極性溶媒への溶解度が低いことから、水を含む溶液中で電気化学的測定を行うことは困難であることが分かった。そこで、錯体を良溶媒に溶かした溶液を電極表面に滴下し、溶媒を蒸発させることで錯体を電極上に添加することを検討している。そして、その電極を用い、pHを変えた緩衝溶液中で測定を行うことにより、プロトン共役電子移動に伴う電位の変化の評価を考えている。
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Research Products
(4 results)