2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J04046
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 龍一 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ヘキサベンゾコロネン / 一重項ビラジカル / π拡張ジイミン |
Research Abstract |
ヘキサベンゾコロネン(HBC)骨格を用いたπ拡張ジイミンの合成に成功した。25年度は、para型、ortho型の2種類のπ拡張ジイミンの合成に成功し、いずれも^1H NMRのブロード化が観測された。これは、ラジカルの生成を示唆するものである。HBC骨格を用いたπ拡張キノンは、酸素上に置換基導入できないことから、物性変化の自由度、安定性の制御に問題があった。π拡張ジイミンでは、窒素上の置換基を変更することで、物性の制御が期待できる。25年度は、窒素上にメシチル、メシル、トシル基を持つpara体、ortho体の合成に成功した。その結果、メシル基を導入したπ拡張ジイミンは、メシチル体に比べて安定性の向上が確認された。一方、トシル基を導入したortho型のπ拡張ジイミンでは、超原子価ヨウ素を用いた酸化の際、ベンゼン環とヘキサベンゾコロネン骨格で縮環が起きることが、MSスペクトルから確認された。この化合物は、他のπ拡張ジイミン体と同様に、^1H NMRがブロード化し、ラジカルの発現が示唆された。次に、この化合物の還元を行なったところ、還元体であるジアミン体の生成が^1H NMRにより確認された。このことは、トリフェニレン型のジイミン骨格を保持した縮環体の生成を示唆するものである。現在、合成に成功した各種π拡張ジイミン体のX線結晶構造解析を検討している。さらに、ESRやSQUIDといった磁化率測定、電気化学測定によるHOMO-LUMOギャップの考察を進めている。これらは、π拡張ジイミンが、非局在型一重項ビラジカルか否かを判断するためのものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的化合物であるpara型、ortho型のπ拡張ジイミンの合成に成功し、その物性を明らかにした。しかし、これらの化合物の結晶性が非常に悪く、X線結晶構造解析の成功には至っていない。一重項ビラジカルの研究においては、X線結晶構造解析による結合長の議論が非常に重要な位置を占める。早急に問題解決を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
π拡張ジイミンのX線結晶構造を得る。さらに、ESRやSQUIDによる磁化率測定から、ビラジカル性の存在についての確証を得る。問題は、化合物の不安定性である。したがって、グローボックスを用いた実験手法の改良を今後も行っていきたい。
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