2013 Fiscal Year Annual Research Report
らせんポリキノキサリンのキラルスイッチングを特徴とする高エナンチオ選択的不斉合成
Project/Area Number |
13J04163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤井 勇斗 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 触媒的不斉合成 / キラル高分子触媒 / らせん反転 / ポリキノキサリン / パラジウム / クロスカップリング / ヒドロシリル化 / リン配位子 |
Research Abstract |
我々は、ポリキノキサリンの側鎖に光学活性置換基を導入したキラルらせん配位子PQXphosのらせんキラリティーが、溶媒により反転することを既に報告している。今回、我々はPQXphosのらせんキラリティーが温度でも反転することを見出し、触媒的不斉合成に適用することで、温度を変化させるだけで両方のエナンチオマーを高選択的に作り分けることに成功した。 側鎖に配位性部位であるジフェニルポスフィノ基を有するキラルらせん高分子配位子PQXphosを用いてパラジウム触媒による不斉鈴木―宮浦クロスカップリング反応に適用した。リン酸エステル部位を有するナフチルブロマイドと1-ナフチルボロン酸のクロスカップリング反応をTHF/1,1,2-トリクロロエタン(v/v=5/2)混合溶媒中で行った。25℃で調製した左巻きの配位子を用いて25℃で反応を行うと、R体のビナフチルが95%eeで得られた。一方で、60℃で調製した右巻きの配位子を用いて同様の反応を60℃で行うと、S体のビナフチルが91%eeで得られた。この結果により、反応条件の温度だけを変化させることで、両方のエナンチオマーを高選択的に作り分けることに初めて成功した。この温度によるらせんキラリティー制御は、スチレンの不斉ヒドロシリル化反応にも適用できる。 これまで、温度を変化させるだけで両方のエナンチオマーを合成する例はいくつか知られていたが、不斉発現機構の温度変化に依存しているため、個々の反応に特異的であり他の不斉反応には適用できないという問題点があった。これに対し、今回開発した触媒系は、反応機構の異なる不斉反応に適用できる一般性の高いものであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、らせんポリキノキサリンの可逆的らせん反転を利用したジアステレオマーの高選択的な作り分けを達成することである。これまでに、ポリキノキサリンは溶媒により主鎖のらせんキラリティーを制御できることが報告されていた。今回、温度(熱)でもらせんキラリティーを制御できることを見出し、触媒的不斉合成に適用することに成功したため、より簡便にらせん反転を利用したジアステレオマーの高選択的な作り分けを達成することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリキノキサリンの可逆的らせん反転を利用したジアステレオマーの作り分けを実施する。現在までに、ポリキノキサリンの主鎖のらせんキラリティーが溶媒だけでなく温度でも反転することを見出している。ポリキノキサリンのらせんキラリティーを外部刺激により制御することで、二種類の不斉反応の組み合わせで合成し得る4種類のジアステレオマー全てを単一の触媒から高選択的に作り分けることに挑戦する。
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