2013 Fiscal Year Annual Research Report
液中レーザープラズマの生成メカニズムの解明とその場元素分析への応用
Project/Area Number |
13J04184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 文香 京都大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レーザー誘起ブレークダウン分光法 / レーザーアブレーション / 液相レーザーアブレーション / レーザープラズマ / 発光分光分析 / キャビテーションバブル / 気泡 / その場分析 |
Research Abstract |
水中レーザー誘起ブレークダウン分光法によるその場元素分析法の確立に向けて、以下の成果を得た。 (1)発光スペクトル測定時のプラズマの状態を調べるために、スペクトルと同時にプラズマや気泡の画像を時間分解で観察した。このとき、プラズマと気泡の境界との距離は時間とともに大きくなり、スペクトル形状は明瞭となった。最適なプラズマを得るためには、気泡がプラズマに対して十分に大きく、プラズマが膨張しやすい環境が必要であると考えられる。 (2)生成初期の気泡とプラズマの関係を調べるために、同一パルスレーザー照射中に気泡とプラズマ発光領域を観測できる装置を自作し、気泡画像と発光画像を測定した。このとき、プラズマ周縁部と気泡界面の凹凸が一致することが明らかとなった。また、発光線が得られない短いパルス幅(20ns)のレーザーを照射すると、照射中の気泡サイズは100nsの場合と比較して十分に小さいことがわかった。初期の気泡サイズは、プラズマの成長挙動に影響を与えると考えられる。 (3)プラズマの状態が安定しない原因を解明するために、レーザーをCu板に対して斜め方向から照射し、パルス幅によってプラズマ発光領域がどう変化するかを調べた。パルス幅が長いと、ターゲット表面に対して垂直な方向ではなく、レーザー照射方向に発光領域の中心が存在した。これは、パルス前半で生成したプラズマにパルス後半のエネルギーが与えられているためと考えられる。安定なプラズマを得るためには、パルス幅を厳密に制御する必要がある。 (4)気泡中の物質の挙動を解明するために、スーパーコンティニウム光を背景光として気泡内部に入射し、透過スペクトルを測定した。NaCl水溶液中のAl板にレーザーを照射し、測定を行ったところ、AlとNaの吸収線を得ることに成功した。気泡中の物質の透過スペクトルを観測した例はこれまでなく、新たな知見が得られる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水中レーザー誘起ブレークダウン分光法によるその場元素分析法の定量分析の精度や検出感度の向上を目指し、水中でのレーザープラズマの生成メカニズムを解明することが本研究の目的である。これに対して今年度、プラズマに対する気泡の大きさや生成初期の気泡サイズのパルス幅による違いがプラズマに大きな影響を与えることを見出した。数十nsのパルス幅の違いによってプラズマの成長挙動が大きく異なることを示したことは、定量分析の精度向上に向けて重要な成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに早い時間帯となるレーザー照射直後の気泡の観察を行えるようなセットアップを作製し、パルス照射中の気泡の成長過程とプラズマの成長挙動との関係を明らかにすることを目指す。また、透過スペクトルの時間分解測定を行い、気泡中の物質の挙動を調べる予定である。
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Research Products
(6 results)