2013 Fiscal Year Annual Research Report
知覚的・認知的ずれを補正する視覚的運動処理メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J04215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 健太郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 運動知覚 / 視覚情報処理 / 時間知覚 / 空間知覚 / 錯視 / 運動速度 |
Research Abstract |
本年度は, 主に動きによる知覚的変化に着目し, 以下の内容について明らかにした。 ①運動による時間的変化が刺激の呈示直後に生じることを明らかにした 速度勾配を持つ刺激を用いた先行研究から, 運動速度が時間知覚に及ぼす影響は平均速度で決定されるのではなく, 呈示時間の前半に出現する運動速度が大きな影響力を持つことが示唆されてきた(Sasaki et al., 2013)。本研究ではこの仮説をより直接的に検討するため, 呈示時間の中間で運動刺激の速度を変化させ, 前後半の運動速度が時間知覚に及ぼす影響を検討し, 呈示直後の運動速度の処理が時間の知覚に影響することを示した。 ②運動による空間的変化に主観的な運動表象が関わることを明らかにした 本研究では, フラッシュラグの生起に主観的な運動表象がどの程度寄与しているのかを検討するため, 遮蔽を利用して実験を行い, 運動刺激がフラッシュの呈示時点で運動を終了した場合にも, 遮蔽物が運動の軌道上に布置されているときは弱いフラッシュラグ効果が生じることを示した。この結果から, 主観的な運動表象がフラッシュラグの生起に関わること, 物理的な運動入力もフラッシュラグ生起において重要な役割を担うことを示した。 ③運動物体の重なりが速度知覚を変容させることを明らかにした 二つの反対方向に回転する物体を同時に呈示し, 恒常法による速度弁別課題を行った。その結果, 刺激を同じ場所に重ねて呈示した場合に速度弁別閾が有意に高くなり, さらに手前に配置された刺激の運動速度が, 奥に配置された刺激に比べて速く知覚された。これらの検討により, 運動物体の重なりが速度の弁別を阻害すること, また知覚速度が重なりの順序により異なることを示した。 これらの成果について国内外の学会, 研究会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に動きによる知覚的変化に着目し, 運動による時間的・空間的な歪みの生起メカニズムについて計画通りに検討を重ねてきた。またこれらの検討に加え, 新たに運動物体の重なりによる速度知覚の錯覚現象を発見し, そのメカニズムについて検討を行うなど, 新たな展開に向けた研究も進められている。今年度の成果は国内外の学会及び研究会で発表されており, 論文投稿に向けての準備も整って来ている点から, おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果を, 現在投稿中のものを含め, 雑誌論文として順次報告を行っていく。また次年度の研究計画に記載している通り, 視覚的な動きの処理による認知的な変化の生起メカニズムについて, バイオロジカルモーションを切り口として新たに検討を行って行く予定である。さらに, 本年度新たに発見した運動速度の錯視についてもより詳細に検討を重ね, 動きによる知覚的な補正について, これまでの成果と合わせて統合的に解明を行っていく。
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