2013 Fiscal Year Annual Research Report
超低摩擦を実現する量子論に基づくマルチスケールトライボケミカルシミュレータの開発
Project/Area Number |
13J04250
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白 珊丹 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トライボロジー / シミュレーション / 固体潤滑 / 低摩擦技術 / ダイヤモンドライクカーボン |
Research Abstract |
現在、環境問題・エネルギー問題解決のためには低摩擦特性・高耐久性をもつ潤滑剤の迅速な開発が強く求められています。そのためには低摩擦・高耐摩耗潤滑剤の設計指針を決定する必要があります。そして、マルチスケールで起こる様々な摩擦現象を明らかにする必要があります。そこで本研究では、超低摩擦技術を実現するための量子論に基づくマルチスケールトライボケミカルシミュレータの開発に関する研究を行いました。まずTight-Binding量子分子動力学法を用いたF終端ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜とH終端DLC膜同士の摩擦シミュレーションを行い、その低摩擦メカニズムを検討しました。最初に圧力1GPaの場合を検討しました。F-DLCとHLCの摩擦係数は0.07と0.04を示し、両方とも低い摩擦係数を示すことを明らかにしました。これは、膜表面に終端されたF原子とH原子によって摩擦界面における化学反応が抑制され、DLC膜が非常に滑らかな摩擦状態を示すためであると明らかにしました。次に、接触圧力が高い過酷な接触面を考え、圧力7GPaの場合を検討しました。その結果、F-DLCとH-DLCの摩擦係数は0.08と0.38を示しました。これは、F終端DLC膜はH終端DLC膜より、高い圧力条件でも低摩擦特性を維持し続けることを示しています。また、この違いが出る原因は、表面に終端されたF原子間の強い反発相互作用によるものと明らかにしました。また、DLCにSiを添加することで摩擦特性が向上するメカニズムを検討するため、Si添加によるダイヤモンド膜の構造変化を第一原理計算を用いて調べました。Si含有量を6.25%添加すると、表面のsp3のC原子が炭素膜の低摩擦化に寄与すると考えられるsp2のC原子に変化することを明らかにしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低摩擦発現メカニズムを明らかにするため、原子・電子スケールにおける化学反応及び摩擦プロセスの解析を行いました。その結果、F終端DLC膜の極圧下における低摩擦メカニズムを解明しました。また、Si添加ダイヤモンド膜の構造変化プロセスを解明し、Si添加がDLC膜の摩擦特性に与える影響を検討しました。以上より、研究はおおむね順調に進展していると思います。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、量子論に基づくマルチスケールトライボケミカルシミュレータの開発を行うため、原子・電子スケールにおける化学反応及び摩擦プロセスの解析を行いました。来年度は、ナノメートルスケールにおけるガス雰囲気(水・アルコール)が、炭素膜の摩擦・磨耗プロセス及び膜の変質プロセスに与える影響を調べ、界面構造が変化した炭素材料の低摩擦発現条件を解明します。
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Research Products
(7 results)