2014 Fiscal Year Annual Research Report
特異な環状構造を有するメロテルペン型生理活性天然有機化合物の全合成研究
Project/Area Number |
13J04258
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
廣川 高史 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | pestaloquinol / cytosporin / epoxyquinol / 血管新生阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物内生子嚢菌Pestalotiopsis sp.より単離されたプレニル化エポキシキノール類であるpestaloquinol AおよびBは、HeLa細胞に対する細胞毒性を有することが報告されているが、イソプレン単位を欠く類似天然物epoxyquinol類には血管新生阻害活性が知られていることから、pestaloquinol類の詳細な活性の評価を行うことを目指し、全合成研究を実施している。 Pestaloquinol類は同時に単離されたcytosporin D の酸化的二量化により生合成されることが推測されていることから、生合成経路を模倣した全合成を達成することを目的とし、単量体であるcytosporin Dの全合成に向けた研究を進めている。合成にあたり、三段階に分けた計画、すなわち①不斉ジヒドロキシ化反応を用いたピラン環部位の構築②Diels-Alder反応による骨格構築③Stilleカップリング反応による側鎖の導入を立案した。既に単量体の全炭素骨格を有する化合物を得ることはできているが、合成中間体の光学純度が不斉合成と言うには満足のいくものではなかったため、光学純度向上の検討を行った。すなわち、95%ee以上で調製可能であることが報告されている化合物を出発原料として用いることで、目的の中間体の合成法を確立することに成功した。またヒドロキシ基上の保護基は合成終盤での脱保護を容易にすべく変更を施し、先の合成を試みた。Diels–Alder反応により二環性骨格を中程度の立体選択性で構築した後、以前開発した手法に従って種々の官能基変換を行い、側鎖導入前駆体まで導いた。官能基変換の過程では、ヒドロキシ基の保護基を嵩の小さいものに変更したことにより、試薬の等量を減らしても反応が完結する、あるいは収率が改善するといった知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
合成終盤における収率が非常に低いために充分な検討を実施できておらず、全合成の達成には至っていない。しかし、これまでの研究で課題として残されていた光学純度の向上を成し遂げることができた。また様々な合成経路の改良によって、二環性骨格を持つ重要中間体まで、比較的高い収率で合成する方法を確立することができ、酸化的二量化前駆体の合成の完成まで、後は側鎖の導入を残すのみという段階まで到達している。
|
Strategy for Future Research Activity |
以前開発した合成ルートでは、Stilleカップリング反応による側鎖の導入が非常に低収率であるという問題が残っていた。この原因は基質の嵩高さによる立体障害の影響ではないかと推察しており、今後は全ての保護基を除去した基質を調製し、カップリング反応の足がかりとなるハロゲンの導入を検討する予定である。その後側鎖フラグメントとのカップリング反応を行い、cytosporin Dおよびpestaloquinol類の全合成を達成する。合成ルートの確立が出来次第、論文作成に向けて各工程の収率の改善を進めていく。
|