2013 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム(0)錯体による置換アルケンの化学、位置および立体選択的二量化反応
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13J04284
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
廣井 結希 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 交差二量化反応 / 置換アルケン / ルテニウム錯体 / 触媒 / ジエン配位子 / 不斉反応 / 位置選択的 / 共役ジエン |
Research Abstract |
平成25年度は、研究計画に基づき、(1)キラルジエンを配位子として持つ新規ルテニウム錯体触媒の合成、(2)基質適用範囲の探索、(3)置換アルケンのエナンチオ選択的交差二量化反応を中心に研究を行った。 1. 各種支持配位子を持つ新規ルテニウム錯体触媒の合成 各種キラルジエン配位子を持つ新規ルテニウム(0)触媒の合成を行った。また、ラセミ体としてではあるが、ジベンゾシクロオクタテトラエン、ホスファアルケン配位子を持つ新規ルテニウム錯体触媒の合成に成功した。 2. 基質適用範囲の探索 従来行ってきた置換アルケン間の交差二量化反応に加え、共役ジエン-置換アルケン間の交差二量化反応を行った。特に、ペンタジエン類となどの4位に置換基を持つ共役ジエン類とアクリル酸メチルとの交差二量化反応では、立体障害にも関わらず分岐型の生成が優先されることを明らかにした。 3. エナンチオ選択的交差二量化反応 新規に合成したキラルなRu(0)錯体を用い、これまで報告してきた置換アルケンの交差二量化反応と、共役ジエン-置換アルケンの交差二量化反応を不斉反応に適用した。メタクリル酸メチルと2,5-ジヒドロフランの交差二量化反応では、80%eeで交差二量化生成物が得られ、置換アルケン間の交差二量化反応において初となる不斉交差二量化反応に成功した。現在のところ反応の最適化はできていないものの、3,4-ジメチル-2,3-ヘキサジエンとアクリル酸メチルとの反応では、共役ジエンと置換アルケン間で始めての不斉交差二量化反応に成功した。また、本研究成果に係る学会発表において、学生講演賞(日本化学会第93春季年会)、有機金属化学討論会ポスター賞(第60回有機金属化学討論会)を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していた新規錯体触媒の合成と、基質適用範囲の探索は比較的順調に進み、7種の新規錯体の合成と、ジエン-アルケン間の交差二量化反応に成功した。加えて、予備的検討段階ではあるがジエン・アルケン間の不斉交差二量化に成功した。更に、今回新規に合成した触媒の活性と、立体、電子的な性質を比較することにより、配位子による触媒活性、選択制の制御についての傾向を見いだし、26年度の計画である反応機構の解明への手掛かりを得た。以上の点から、当初の計画以上の進展をしたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、26年度に計画している反応機構の解明を推進するとともに、この触媒系特有の反応である不斉交差二量化反応の収率及び不斉収率の向上を目指す。反応機構の解明については、計画通り、化学量論反応を軸に進める。触媒活性・選択制の向上については、触媒および反応条件の検討により、改善を目指す。問題点として、現在の触媒合成法では、ルテニウムを0価に還元する条件下で配位子の分解等の副反応が起こってしまうため、配位子の置換基に制限があった。この制限は、触媒活性の制御に対して大きな制約となってしまう。対応策として、・反応性を抑えた還元剤を用いた金属種の還元の検討、・ルテニウム0価種に対し配位子を加えることによる、配位子交換反応でのジエン配位子を導入、の2点について検討を行う予定である。
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Research Products
(7 results)